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もうずっときみに恋してる





私はあの子の顔を見るのが好きだった。なんていつも幸せそうに笑う地球人なんだ、と感心したりもした。理由を問えば、「いつも笑っていた方が楽しいでしょう?」とまた笑った。私には考え付くこともなかったことだ


私はあの子を見ていると、とても幸せになる。スパークの辺りがキュゥ、と収縮して息苦しくなってしまう感じが心地好かった。理由はよく分からなかったが、それでもきっとこれはあの子が好きだからこうなるんだと漠然と悟っていた。


あの子との出会いは、何でもない只の人の波が行き交う雑踏の中、雨の中で呆然と立ち尽くしていたから声を掛けた。どうかしたのかい?、「家に帰る手段が無くて」、彼女の車は事故にでもあったのか大破していた。乗りなさい、と促せば遠慮がちに訊いてきた「…私、ずぶ濡れですよ?」思えば、最初に出会った時からあの子は他人を思いやる気持ちが強い人であった


縁がそこで終わり、切れるようなものであったならば私は"恋"と言うものには落ちなかったはずだ
後日、手土産を持ってサイバトロン基地まで徒歩でお礼を言いに彼女が来た時から、私の中では既に色づき始めていたのかもしれない



ナマエ君、私は、君が好きだ、だから



















≪・・・・・・・だからナマエ君、私と付き合ってくれませんか!!!≫

「さっきまでのシリアスなモノローグは何だったんですか!?」



ビークルモードで逃げるナマエ君を追う。向こうは足、此方は車、因みに此処はサイバトロン基地内部
擦れ違う仲間達からは「またか」と言うような表情で見送られていた。誰も咎めたりはしない



「プロールさん!いつもみたいに冷静になってください!」

≪私はいつでも冷静だよナマエ君!!≫

「どこがですか!わっ」



ターボをかけて、一気にナマエ君の正面に回りこみ追い詰める
ドリフトした私を避けようとしてナマエ君が尻餅をついてしまった。すまない!!


「きょ、今日は一段と手段がハンパじゃないですねプロールさん…」

≪いやぁ、今日はプレゼントがあるからね。受け取って貰おうと此方も必死なんだよ≫

「プレゼントあったんですか!?なら最初に言ってくれれば私だって落ち着きましたよ!何も言わずに車のままで私を追い回してくるから此方も逃げてただけで…」



パタパタと砂埃を手で払いながら、ナマエ君が笑って立ち上がる
おや、プレゼントがあると伝えていなかっただろうか?これは失敗だ


スモークで隠されている車内、その中のナマエ君へのプレゼントが見えるようにサイドドアを開け放す。用意するのになかなか手こずってしまったのだが、ナマエ君は喜んでくれるだろうか?



「…えっ!?」



車内に詰められた色鮮やかな多種多様の花が、ドアを開いた反動でシートから溢れ出て行く
車内の天井にまで盛られ飾られた花束。名前は知らないものも多い。全て見た目で判断したから



「こ、これ…どうしたんですか?」



花に触れようと手を伸ばしてきたナマエを遮って、ロボットモードにトランスフォームする

車内――体内に入っていた花弁が、動いたことによって一斉に宙に舞った

地球で学んだ、―『花吹雪』と言うものを再現してみたかったのだが、成功しただろうか?


「……わぁ!」


どうやら成功したようだ



≪気に入ったかい?スパイクやカーリー達にも手伝って貰ってね、徹夜で用意したんだ。花は一日で萎み枯れてしまうと聞いたからね≫

「…おかしいですね、パトカーの中が、綺麗な花でいっぱいだなんて」

≪ナマエ君…≫


舞っていた花弁が、ナマエ君の頭上や肩に降り積もっている
きっとこんな時、マイスターならば≪まるで君は花の精みたいだね≫ぐらい言えるのだろうが、私にはそんな芸当は出来ない

未だ落下を続ける花弁を掌で受け止め、しゃがみ込み、そっとナマエ君の頭に落とす



≪…綺麗だよ、ナマエ君≫

「…プロールさん… 大変だったんじゃないですか?こんなに…」

≪問題はない 君のその笑顔が見られたからね、報酬としては充分すぎる程だ≫

「プロールさ… あ!、」

≪?どうかし…≫

「あははっ 付いてますよ!プロールさん」



伸ばされたナマエ君の手が、私の額のパーツの上に触れる
ナマエ君のその細い指には、ピンク色した小さな花弁が



≪ありがとう、ナマエ君≫

「いえ、此方こそです。まさかこんな綺麗なプレゼントがあっただなんて…だから今日、何だかおかしかったんですね、プロールさん。高揚してたんですか?」

≪い、いや…そ、そんなことはっ≫

「…普段冷静なプロールさんも良いけど、今日みたいなプロールさんも、私好きです」

≪!!≫



な、ななんだって?




≪ナマエ君!い、今…!≫

「…何のことでしょうか?」

≪と、惚けないでくれ給え!≫

「さぁ?」



ナマエ君が不敵に笑った
やはり、君の笑顔には私のスパークを刺激する作用があるらしい
知っているかい?いや、知っているのは、私だけで充分だ