≪ああナマエ、居たんだね。こんにちは≫
嫌味でも何でもない。ただラチェットは私に挨拶をしてくれただけだ
トランスフォーマーサイズのカルテと画面を見ていたのに
わざわざ視線を外してまで基地に足を運んだ私に挨拶をしてくれたのだ
でも、どうだろう
「………大きいわ」
≪何がかね?≫
「ラチェットの背丈よ」
≪……仲間内では中ぐらいなんだが?≫
「私と比べてよ!」
そりゃそうだろう、とラチェットが肩を竦める
人間らしい行動を取りながら呆れた表情を浮かべるラチェットを睨めつける
今日は、ホイルジャックが出てこない。出動しているのかもしれない
なら今、この医療スペースには私とラチェットだけだ
別にヤマシイことをおっぱじめ様としているわけじゃない
「私、貴方の膝小僧までしか届かないわ」
≪それはそうだろう。だって君は人間、私はトランスフォーマー、だからね≫
「人間は小さいって当たり前だと思ってるの?おっきい人だっているよ?」
≪いたって高々2mぐらいだろう?我々には叶わないさ≫
「…私も、もうちょっと背が高かったらなぁ」
≪ナマエがそんなに身長に拘ってる理由が分からないけど、背を高くしたいなら背伸びでもしてみたらどうだい?≫
コンソールにデータを打ち込みながら横目で私を見下ろしてくるラチェット
嫌味っぽいけど、決してラチェットは嫌味のつもりじゃない、ことは分かってるけど
彼が言ったから、つま先立ちになってみる
それでも、椅子に腰掛けているラチェットの太腿にでさえ届かない
「……あまり変わらない!」
≪やれやれ、今日のナマエは全く一体どうしたと言うんだ?≫
つい、と差し伸べられた手に運んで貰い、キーの上に立つ。
余計なボタンを押さないように慎重に
≪で、理由は?≫
「……昨日、久しぶりに身体測定してみたの」
≪ほお。興味深いな。今度開いてみようか≫
「また考えておく。そしたらね、身長が、1cm5mm伸びてたのよ」
≪良かったじゃないか。おめでとう。体重は増えなかったか?≫
「余計なお世話!だからね、ラチェットを見上げる差も、少しは縮まってるんじゃないかと思って此処に来てみたけど…」
≪ちっとも変わってなかったから不機嫌だったというわけだね?≫
図星だったから、ラチェットから目を離してテレトラン・ワンの方へ目を向ける。
コンボイ司令官率いるサイバトロン軍が、ちょうどデストロンたちと交戦している映像が映し出されている。善戦中だ
≪今は、高いところにいるじゃないか≫
「キーの上に乗ってるからでしょ?」
≪でもほら、私と君、こんなに近い≫
「…!」
ラチェットが手をキーに添え、グッと顔を近づけてくる
すぐそこまで来たラチェットに顔が熱くなった。ような、気がする
「ち、近い!」
≪ナマエが望んだ距離だろう?≫
「そ、そうだけど…」
≪なら、何も不満はないはずだ。違うかい?≫
違う、と言おうと動きかけた私の唇はあっさりと彼に奪われてしまった