デストロンの情報参謀はサウンドウェーブだが、彼が不在時の場合にと作られたのが情報ロボットのナマエだ
当初はプロトフォームそのままに男型として生まれてくる筈だったナマエだったが、
開発中に研究者側が不祥事を起こし、
ブレインサーキットに異常を来たし、
ボディは限りなく男性型に近いが、顔付きとブレインは女性と言うスパークが宿ってしまった
作り直せと命じようとしたメガトロンだったが、ナマエは情報型らしく寡黙で、滅多に皆の前には現れず一日中コンソール画面と睨めっこするような役職であったためにこのままの存在を許された
当初は、軍のメンバー達も興味津々に情報室へと覗きにやってきたりちょっかい掛けにと顔を現していたが、先述の通り、ボディは男性型であるし、話しかけてもリアクションをあまり取ってくれないナマエにすぐに興味を無くした
ナマエが軍で顔を合わせるのは、その大多数が上司に当たるサウンドウェーブを筆頭とした各参謀達とカセットロン、上司の上司に当たるメガトロンと、そしてスカイワープだけだった
≪ようナマエ!やってるかぁ?≫
≪……スカイワープ、貴方また来たの?≫
≪嬉しいのか?≫
≪……いえ、全然?大人しくしててね。何も触らないでね≫
≪わーってるって≫
初対面の際に、ナマエの性格を面白い奴!と評して後々にも積極的に交流をとってきたのはこのスカイワープだけだった
サウンドウェーブとはあくまで事務的に、スタースクリームとは必要最低限のみ、メガトロンとは一方的に命令を受けるだけ、だがこのスカイワープは自らが率先してナマエに絡んでくる。ナマエの脳内ではこの男は面倒くさい奴と認識している。行動がまるで不明だった。何故この男は、この然して何もない言うなれば機械しかない殺風景なこの場所にひどく入り浸るのか
≪ん?ちょっと待て……冷てっ!お前の手ぇつめたすぎだろ!≫
黙々と画面を見て仕事をしていたナマエを見ていたスカイワープは、アイセンサーに移ったナマエの身体のサーモグラフィーの色に驚く。手、指の先が真っ青だ
慌てて手を握り締める。ナマエが驚いたような表情をした。あ、その顔初めて見た、とブレインに記録する。そんなことよりこの冷たさはどうなっているのか
≪大袈裟ね……ちょっと調節するのを忘れてただけよ≫
いつも無表情な顔を少し嫌そうに歪められたが気にしない。元来スカイワープは、そんな相手の微々たる表情の変化等に気付けた試しはない
≪ちゃんと体内温度の管理しねぇか!冷え冷えじゃねぇかよ!≫
≪…分かったわよ。調節するから、とりあえずこの手を放してくれる?≫
幾ら男性型と言っても、力はスカイワープたち戦闘要員には敵わない
どうにか手を解放してもらおうと、手首を動かすがスカイワープの手は離れない
しかもこの男はこんな驚くことを言う
≪俺が暖めんの手伝ってやらぁ!≫
≪え、結構よ≫
≪は!?何ででぃ!≫
即答された。ナマエは呆れた表情を浮かべて、最早掴まれている左手など無視して、右手を動かしてモニターを操作し始めた。完璧にスカイワープとの会話に飽きて来ている
≪だって意味がないもの。
それぐらい分かってるでしょ?≫
≪…いーや、わからねぇな!とりあえず大人しく俺に暖められとけって!≫
≪………まったくもう≫
強情な男、諦めないと理解したのか、ナマエは一度全ての作業を中断し、身体ごとスカイワープの正面を向き、両手を差し出す。
急に近くなってしまった距離に、スカイワープは一瞬怯むが、この面白い機会を逃してなるものか、と
頭3つ分低いナマエの身長に合わせるためにしゃがみ込む
手に熱を送り込み、ぎゅっとナマエの両手を同じく両手で握り締めた
他人と触れ合ったことなどなかったナマエはビクッと恐ろしげに身体を揺らす
恐がられてるな、とは感じたが、これには慣れてもらうしかないな、と
スカイワープはナマエの手に熱を送る作業を続ける
両者の間には沈黙が流れたが、機械が作動する音だけが室内に響いている
≪………―― オラ!終わったぜ≫
≪…………≫
≪お礼ぐらい言わねぇかい!≫
≪!≫
しげしげと己の手を見つめていたナマエがスカイワープの言葉にパッと顔を上げる
≪……お、お礼?≫
≪なんでぃ、お礼も言えねぇのかよ?≫
≪い、言えるわよ! ………あ、ありがとう≫
≪お、おうよっ!≫
言えと言ったのは自分だが、言われた自分がこうも赤くなっていては格好が悪い
画面に向き直ったナマエにバレないように顔に行った熱を拡散させる
コンソールを見ていたナマエが、ポツリと零す
≪……まだ、此処にいる?≫
≪ん? 駄目か?≫
≪…別に 居ても、良いわよ≫
≪…へへっ、やりぃ≫
≪・・・・・・・≫
それから、
ナマエをサウンドウェーブに頼まれ呼びに来たフレンジーとランブルがルームに入り、
≪何でスカイワープのアホがここに!≫≪ナマエに何したんだよー!≫≪はー!?俺はなんもしてねぇってんだ!≫と小競り合うまでもう少し