≪私はね、ナマエ。こう見えても暴力は嫌いで話し合いで平和的な解決を願う性格なんだよ≫
「………そ、そうですか」
だが、そう言いながらもラチェットは左の腕に仕込んである回転鋸を、右腕に仕込んである機関銃を構えながら
怯えるスキッズとマッドフラップ、そして二人の前に立って二人を護っているアイアンハイドを追い詰める。
≪ま、待てラチェット お前がそういう性格ならば、話せば分かる筈だ≫
≪平和的な解決を好む私だが、愚か者の話には耳を貸さないことにしてるんだ。ナマエ、カルテを渡してくれるかい?≫
「はい」
人間のソレより少し大きい彼等サイズのカルテを6m上にあるラチェットの手に数枚渡す。重いカルテを持ち上げると少し後ろによろめいたが、ラチェットがすぐに背中を支えてくれたので倒れることはなかった
≪さて話をしよう 今月に入ってからの損傷一覧だ。
まずアイアンハイド、お前はディセプティコンとの戦闘でまず右腕のガトリングを損傷している。そして先日サイドスワイプとの組み手により誤って体勢を崩し、サイドスワイプの一太刀を胸部に受けてボンネットを破損している。リペアレベルはA 部位を切り開いて新しいものに取り替えなければならない≫
≪なっ…なんだ、と…?≫
アイアンハイドは自分の胸部と腕を見る。酷い傷だ、彼等の体内にある回線の一部がむき出しになって火花を散らしている。
ラチェットは次に、アイアンハイドの後ろに隠れているツインズを見た
≪お前達はアイアンハイドより軽傷だ。双方が喧嘩をして出来た破損しかない。リペアレベルはC 溶接だけだな≫
≪よ、良かった…≫
≪生きノビたぜ兄弟…≫
お互いの身体を抱きしめ合って安堵し合うツインズの前ではアイアンハイドが、リペア区画に連れて行こうとするジョルトに必死の抵抗を続けていた
≪ま、待て!これぐらいなんともない!≫
≪往生際が悪いですよアイアンハイド 良いから早く此方へ≫
≪う、うおおおおおぉぉぉぉ……≫
雄叫びを上げているアイアンハイドをジョルトがエレクトリックウィップを使って
彼の巨体を引っ張っていく姿を見送る。ツインズもビクビクしながらその後を付いて行っていた
≪ふむ、行ったか≫
「そのようですね」
≪では、我々も行こうか≫
「はい」
人間達がオートボット達の性能を記録する為のカルテを手に取って、歩き出そうとしたがそれをラチェットに阻まれる。
アイアンハイドたちを脅すために使われていた武器はもう収納され、彼の大きな手が此方に向かって差し伸べられていた。
≪待て 乗りなさい≫
「え…大丈夫ですよ!基地内で近いし、ラチェットの手を煩わせるわけには…」
≪君一人ぐらい問題ではないし、なに、少々遅れたってジョルトに任せておけば大丈夫さ≫
「……そうですか?」
それではあまりにもジョルトが不憫なのではないのか…
≪…君との時間を作りたいと言う私の想いは、無碍にされるのかな?≫
「…!………そう言うことなら、致し方ありませんね!」
≪ふふっ 今君の体温が1度上がったね。大丈夫かな?≫
「ほ、ほっといてください!」
口ではそう言いながらも、ラチェットの手の上に首尾良く乗り込んだ私を見て、ラチェットは愉快そうに身体を揺らして笑った