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「#幼馴染」のBL小説を読む
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オール ユー!


冷蔵庫の中の食材が尽きかけているのを見て愕然とした。どうしてだ、何時の間にこんなに無くなった。原因は分かっている。私の夜中の暴飲暴食だ。治さなくちゃいけない、この癖。幸いなことに、未だ体系に問題は見られないが、それもいつ現れるか危うい。ジョルトに言わせてみれば≪もうすぐそこまで来てる≫らしい。信じられるかそんな話!



「〜〜っ、ジョルト!買い物に行こ!」



冷蔵庫の開閉を繰り返していたってなくなった食材が生み出てくるわけではない。
諦めて財布を取って身支度を整える。庭にいるであろうジョルトに声をかけたが返事がなかった。ん?おかしい。いつもなら窓から≪はいはーい≫と返事をしてくれるはずなのだが。


大体ジョルトが返事を返さない理由はこうだ。
1.それどころではない場合
2.私と喧嘩をしていたり、私に呆れていたりする場合
3.声を出しては不味い状況にいる場合(例:新聞配達がいる)



ジョルトの返事がない代わりに、けたたましく家のチャイムが鳴った。どうやら今回は3番だったみたいだ



「はいはいはーい」



出かけようとしていたので格好は人前に出ても大丈夫な姿だ。大丈夫。しかし大丈夫じゃないことが一つ起きた
ドアホンでよく確認もしないままにドアを開けてしまったから、来客者が何者なのかの判断が遅れた




「あっ、お忙しいところ恐れ入ります。わたくし、――株式会社に勤めている者なのですが」


「……(げっ)」



セールスマンだ。一目見たら確実に分かるセールスマン
ピシっとしたスーツ姿に手には銀色のアタッシュケースを後生大事そうに抱えていた。
営業スマイルを浮かべて、右手には名刺を差し出してきている。待て、行動が早すぎなんじゃない?



「えっ、あー…あの」

「すみません 今お時間はよろしいですか?」

「(よろしくないです…)あ…はい…」



せめて家の中には入らせるものか、と足で踏ん張っていたが、
何のその!と言った様子で「では失礼します!」と足を軸にして扉と私を突き破ってセールスマンは侵入してきた。強すぎる




「最近、何か家電製品が故障したとか、破損したなんてことはありませんか?」

「いえ、特には…」

「そうですかー。あ、わが社のカタログになるのですが、今年の春に新発売されましたこのダブルチルドの冷蔵庫なんてのは如何ですか?」

「…い、いえ…」

「一人暮らしの女性にも丁度いい内容量となっておりますが!」

「いや…」


か、顔近づけないでほしい!


「今なら格安で!」

「結構で…」


更に詰め寄らないでほしい!


「サービスしちゃいますよ!!」


手まで握ってきた!も、もう我慢できん!


「…〜〜っ、ジョルトーー!!!」


≪ナマエ!!≫


「は?」




私の上げた叫び声のすぐに、玄関横にある大きな観音開きの窓から青いボディの腕が突き破って入ってくる。窓ガラスが四方八方粉々に砕け散った。セールスマン以上に強引な入り方だが致し方ない


伸びてきたジョルトの手がセールスマンの身体をガッチリと掴み上げる。

可哀想に、セールスマンは言葉を発する余裕もなく、え?え?と戸惑いながら自分の身体とジョルトの腕を交互に見比べていた。そして状況判断が終了したのか、耳を覆いたくなるような悲鳴を上げた




「……ぎゃーー!!!」


「っジョルト、そのままその人を外の道路に押しやっといて!」

≪分かった≫

「あ、あとこれも!」



アタッシュケースも一緒に渡すと、ジョルトが立ち上がって道路の方へと歩いていく姿が壊れた窓から覗き見えた。
律儀に歩道にまで運び、ゆっくりと降ろして セールスマンに何事か話しかけた姿が見えた。声までは聞こえない
ゆっくりと此方へ戻ってくるジョルトを迎えに、玄関から外へ出る



「ありがと、ジョルト」

≪ちゃんと確認しないから、ああなるんだよ≫

「ごめんね。次からはちゃんとするから」

≪はいはい≫

「そう言えば、さっきセールスマンの人になんて言ったの?」

≪………まあ、今後一切ナマエに近付くな的な感じの言葉?≫

「…素直じゃないなあ!」

≪煩いな≫



ジョルトが腕のウィップをちらつかせ始めたので大人しく口を閉じる。
さあ、出かけようか!となるところなのだが、その前にまた一つ問題が出来た




「…窓、どうしよ」

≪………≫

「業者さん、呼ばなきゃね」

≪……謝った方がいいか?≫

「…ううん、良いよ。ジョルトは私の為にしてくれたことだもんね」

≪そうだぞ≫

「開き直るの早いね」



とりあえず、今日は出かけるのは止めて、デリバリーでも頼もう。
壊れた窓の前には、とりあえずジョルトを座らせて塞いでもらう。
何で俺が、とブツブツ零すジョルトが少し不憫だったので
ジョルトの隣でいつものテレビではなく、夜空を見ながらピザにあり付いた。ジョルトも美味しそうにエネルゴンキューブを咀嚼している。美味しい?と聞いたら、普通。と答えられた。食べなければいけないものだから食べているらしい。そんなものなのか


何となくいつもより食べるのが楽しかった。
夜食を食べている、と言うことには気付かぬフリだ