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「#幼馴染」のBL小説を読む
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ただ いつもと 変わらない そんな 日常を





先の戦いの最中、我々は決して孤独などではなかった。
共に戦い助け合う人間の仲間がいた。しかし相対するのは我々の仲間だった
それはどういう様に受け止めれば良いのだろう。
新しく出来た人間は、大切な仲間であり、この地球も第二の故郷になった
その為に、私が生まれ故郷を捨て去ったのもまた事実


≪貴方は自分を裏切ったのだ≫




そうだ。センチネルは我等種族を裏切ったと宣ったが、何よりも大きく見捨てたのは自分自身だ


私はそれを責めた。しかし、私は 今も未だ、間違ってはいないのか?




果たして 私は この質問を 誰に問えば良い?








「オプティマス?…腕が、痛むのですか?」



思案に耽っていた私の傍で、女性の声が聞こえた。
聞き間違う筈も無く、それは彼女のものであった




≪ナマエ、君か…… いや大丈夫だ。問題はない≫

「そうですか。良かった」




引き千切られた私の右腕の心配をしてくれたナマエは、
そのまま立ち去るのかと思えば、私のすぐ横に腰を落ち着けた



≪…ナマエ、仕事は大丈夫なのか≫

「大丈夫です 全て終わらせて此処にやって来ましたから」

≪そうか≫



正直な話、彼女が来てくれて良かった。ナマエと話をしていたかったのだ




目の前で、外れた腕のケーブルを前のように修復し、エネルゴンが順当に回るように配線を整えてくれているラチェットとジョルト、ブレインの様子を
同じようにナマエの傍に座り込んで見守る

私の肩の関節の方はもう修復済みだ。荒々しく引き千切られていたケーブルや装甲も整えられ治された腕を取り付ける準備は既に終わっていた


ラチェット達が慌しく動いている姿を見て、ぼんやりとブレインに映像が浮かぶ
今回の戦いで死んで行った仲間達は、この先の地球と人間と過ごす未来に何を望んでいたのか





「やっぱり機械生命体ですね」


≪・・・どういう意味だ?≫




立てている膝を抱え直して、ナマエが私を見上げて笑う




「私達人間は腕が取れちゃったらもうそれこそ一生モノの傷ですけど、オプティマス達は治っちゃうんですね。そう言うとこ、凄いです」

≪そうかな…?≫




研究員であるナマエには我々の生態は珍しいものに映るのだろう。
分かっている。ナマエと初めて出会った時にも、同じようなことを聞かれたものだ




≪…珍しいか?≫

「いいえ、そんなんじゃないです。凄い、んです」

≪そうか≫

「……でも」

≪――む?≫




ナマエの顔に陰りが出た。伏せている睫毛と呼ばれるものが揺れていた




「…オプティマスの心の傷は、簡単には癒えないんですよね…」



≪……―― 心の、傷?≫




心の傷―― スパークへの破損のことか?
いや、今回はスパークに与えられる直接的な攻撃は無かったように思う




≪……私のスパークは無事だ、傷もない≫

「あ、そういう意味じゃないんです。えぇっと…」



言葉を選ぶナマエの性格は好ましかったが、今は選んでいるというより言いよどんでいるように見えた


言いたいことが纏まったのか、ナマエが二本の指でVサインを示した。
その内の一本をもう一つの手で手折る



「……人間には、二種類の傷、というものが存在しています」



≪二種類の傷?≫

「はい。一つ目は、外的身体的に与えうる傷です。一目瞭然のもので、傷を治す医療技術も発展していて、まず大体が癒えます」

≪ああ≫



ナマエが 手折っていた指を再び持ち上げる。



「そして二つ目が内的精神的に与えうる傷です。これは…一見しても、第三者には分かりません。治す方法も各種多様で効き目も人夫々です。癒えるか癒えないか…それも人夫々です」


≪――ああ≫

「私が言いたい"心の傷"と言うものは、 この二つ目のことです。お分かりになられていますか?」

≪問題ない それで―?≫



「オプティマスが今回の戦いで負った心の傷は、その大小は私には測りかねますが、必ず存在していると思うんです私は」




私はいつもナマエの話には真摯になり耳を傾け理解処理してきた
しかし今回ばかりは異質だった。聞いたこともない、実感した覚えもない




「…私は直接戦場に居た訳ではありません。皆さんの話を聞いて、考えました。

師と仰ぐべき方に裏切られ嘗ての仲間達と争い故郷を捨て去る決断を迫られ実行し、皆の為に戦いその身を傷で一杯にして、それでもそのあらゆる傷を理解せず押し込んで泣けもしないオプティマスが、


私は哀しくてしょうがない」


≪――…、――≫




絶句、言葉を紡ぐことが出来ない。
自分の中にある在りとあらゆるものを指摘し露見されたようなこの感覚

傍にある小さなその存在を見下ろす。俯いていた先ほどまでの顔とは一転し、強い光を持った目で見上げてくる




「………」

≪ナマエ、私は…総司令官だ 部下に泣き言を漏らすわけにはいかない≫

「わたし、オプティマスの"部下"になった覚えはありませんよ?」

≪―…!≫

「だから、私の前でだったら…泣いても良いんですよ オプティマス」




彼女が立ち上がる。それでも未だ私の足元にも及ばない
ナマエはゆっくりとした速さで私の足の上に上がって来た。
転げ落ちないようにその身体を左手で支える。…左腕一本だけでは、心許無かった




「泣かないのなら、泣き言を言ってくださいオプティマス。
何でも良い、貴方の心の傷の負担を減らすことが出来るなら何でも言って下さい」


≪……泣き言、…≫

「言い慣れてませんか?それなら私がお手本を見せますね?

私、さっき上司に怒られちゃったんです。先の戦いで見つけたエネルゴン反応の基準値を大きく上回る検査結果が出たのに報告書には平常、って書いちゃったから。まあどう考えたって私が悪いってのは明白なんですけど、あの上司、いっつも怒ってばっかりで何かと私に八つ当たりしてくるんですよ…本当にやってらんないって感じで、私何かしたかなあ?とは思うんですけどね………、……」



一通り上司への愚痴のような泣き言_?を言ったナマエの顔は妙に清清しそうで晴れ晴れとしている。



≪了解した、ナマエ。…しかし、今此処で泣き言を言うのは止めておこう。通信も切っていないし、仲間も周りにいる また二人きりの時にでもな≫
「っはい!」



笑うナマエの頭に緩い力で手を置く。一層笑みを深くしてくれたナマエに、ブレインで処理する前に言葉が口を突いた




≪―― ナマエは、私達が地球に居てくれて幸せか?≫




一瞬呆けたナマエは、その後すぐにまた破顔した




「―― 勿論じゃないですか!」



私には、人間としては何の力も権限もありませんけど、
私個人として言わせて頂けるなら、
地球はオプティマス達の家です!これはもう決定事項なんですよ



「だから、もう変に遠慮なんてしなくったっていいんです。トランスフォーマー達の存在を反対している輩なんて、直に居なくなりますから」



≪ナマエ……≫


「ここで生きて行きましょう?オプティマス」



≪ ――ああ≫





 ――戦争が始まる前には確かに存在していた、
柔らかく、和やかに揺れるスパークと言うものが、今確かに戻ってきたような気がした








ただ いつもと 変わらない そんな 日常を
いつもと 変わらない 笑顔で 終われることができたのなら



お題:選択式御題
















↓泣き言〜あたりの別の展開(オマケ)


一通り上司への愚痴のような泣き言_?を言ったナマエの顔は妙に清清しそうで晴れ晴れとしている。
なるほど、大体の全体像は掴めた気がする


≪分かったナマエ 要するにこういうことだな?≫

「どうぞ!」


≪最近バンブルビーの外出回数が増えたような気がするのだ。恐らくサムの許へ足を運んでいるのだろうとは思うのだが、やはり夜遅くまで外に出ているのは関心しない。ラチェットが新しく就いた副官と言う立場に不満を持っているんだ。満足に私達をリペア出来る立場にいられなくなってしまったと。私は彼が一番最良だと思い任命したのだが私が間違っていたのだろうか?ああそれにディーノだ。奴の人間嫌いがちっとも良好に向かわない。いずれ徹底的に教えようと思っているのだがあまりやってしまうとディーノの信頼を無くすと思うか?レッカーズたちにも何だか『司令官、あんましジェットウィングで高いとことか建設作業場の方には行かないでくださいよ』と注意されるし、それに≫



「うんうん、やっぱりそう思ってたんですねオプティマス!!………― ん?でも、なんか違う…」