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君の手に乗って!


「ご、ごめんねアイアンハイド…貴方にこんなことしてもらうつもりで言ったんじゃ…」

≪良いからさっさと済ませろ≫

「う…本当にごめんなさい……」



本当に早く終わらせて欲しいと思った。色んな意味で

ツナギと呼ばれる作業服に身を包んだナマエは、
俺の手の上に立って屋根の補修工事に身を乗り出している。

天気は快晴だが、生憎にも今日は風が強く吹く日だ。
時折ナマエが風に揺らされてよろけてしまって、気が気でいられない


元はと言えばこれはレノックスのせいだった




「レノックス大佐!お約束いたしましたよね!?」

「ほんっとーにスマン、ナマエ!急に妻から連絡があって、アナベルの迎えに行かなくちゃいけないんだ!」

「そ、そんなぁ…どうしよう…」

「お詫びと言っちゃなんだが、代わりの奴を連れて来た」

「え!どなたですか?」




そう言ってレノックスに呼び出されたのが俺だった。ちょうど武器の点検をしていた時のことだ



「え……アイアン、ハイド?」

「そうだ」

≪なんだ?何の用だナマエ≫

「レノックス大佐、でもアイアンハイドじゃ私の家の屋根には登れな…」

「コイツを足場にすれば、ナマエでも登れるだろ?」

「………はー!?」








≪………≫


まったくレノックスの奴
成人しているとは言え、自宅とは言え、女に屋根の修理をやらせるなんて何事か

ナマエが頼って来たことだろうに、反故にするレノックスに少し怒気が込み上げた




「わぁっ!」

≪ナマエ…!≫



何度目かとなる強風に大きく身体を地面に投げ出そうとしたナマエを
両手を使って何とか受け止める。スパークが何個あっても足りないんじゃないかこれは



「…本当にごめんねアイアンハイド」

≪いや…どうだ、終わりそうか?≫

「はい。後はとりあえず釘を打ち込むだけです」



ツナギのポケットからバラバラと数本の釘を手に出して、
それを板に打ち付ける。華奢な手には似合わぬ金槌が異色とも言えた



≪さすが手際いいな≫

「…自分でも吃驚なんですけどね… でも、これならもうレノックス大佐に頼らなくても一人で補修出来るかもしれませんね」

≪・・・・・・それは止めてくれ≫

「な、何で?」

≪…俺が心配で堪らんからな≫

「!?」

≪!お、おい!≫




動揺したナマエが手に持っていた金槌を落とす。何とか受け止めたが、もう少しで下に落ちていくところだったではないか




≪しっかりしてくれ。ちゃんと握ってろ≫

「ごっ…ごめん」

≪今日は謝ってばかりだな、ナマエは≫

「う……で、でも今のはアイアンハイドが悪いんですからね…」

≪……そうなのか?≫




金槌を渡して、持ち直したナマエの作業風景を見る作業を再開する。
さっきより手元が覚束ない。どうしてだ?





少し経って、漸く作業が終わったようだ。
ナマエの身体を地面に下ろす。ツナギはナマエの汗で少し変色していた



「ありがとう、アイアンハイド。助かりました」

≪ああ≫

「私はこれからお風呂に行きますが…アイアンハイドはどうしますか?」

≪お前を待っていよう。共に基地へ帰る≫

「分かりました。ちょっと待っててね」



家に入って行ったナマエを見届けて、立ち上がる
屋根は自分より少しばかり高い位置にあったが、
ナマエが打ち付けた真新しい板を留める同じく真新しい釘が太陽光を反射して、目が眩んだ