≪ナマエ 君も年頃の女の子だ。偶には羽を伸ばしてみても良いのではないかな?≫
「ホイルジャック、貴方だけよ私のことを"年頃の女の子"だなんて呼ぶ方は」
≪そうかな?≫
ホイルジャックはずり落ちた眼鏡を上げる仕草を取って、笑ってナマエの頭を撫ぜた
機械の筈なのに、その温かい手に撫でられたことによってナマエの顔は仄かに赤く染まった
≪人間の研究員の中でもナマエは最高に素晴らしいよ≫
「褒めてくれて嬉しいわホイルジャック」
≪どうだい?今度また解剖でも…≫
「お断りするわ〜」
いつものように断られてしまったホイルジャックは≪やれやれまたフラれてしまったな≫と笑った。本当にホイルジャックは穏やかな科学者であり戦士だとナマエは思った。
今はアイアンハイドと共同に開発をしている武器の点検をしているが、
その目は厳しく、良いものを仲間達に提供しようという意志が感じられる
ホイルジャックの手助けが少しでも出来ていればいいのに、と心配になっていたところに言われた言葉にナマエは安心した
≪よし、完成だ!≫
「本当ですか!」
武器の最終点検が終わって異常が無かったのか、ホイルジャックの声は嬉しそうだ。
つられてナマエも高い声が出た
≪文句つけようもなし!最高の武器の完成だよナマエ≫
「良かったですね、ホイルジャック」
≪君が手伝ってくれたおかげさ。どれ、一休みしたらアイアンハイドを呼ぼうではないか≫
「そうですね。待っててください 今オイルを貰ってきます」
≪いや すまないね≫
演技なのか本当なのか、腰を擦りながら≪どっこいしょ≫と声を出して床に座るホイルジャックに笑みを返す。
同僚からオイルを分けてもらい、ホイルジャックの許に戻ると
彼はもう次の構想を練っていた
≪よし…今度は人間の武器を開発しようか。この前は手持ち爆弾を作ってみたが起動してから爆発までの時間が短いとの難点があったか…やはり安全にピンを抜いて着火させる為には爆薬の量を調整してそれから…ああ、ナマエの為の護身用の武器も作らなければ…最近は物騒で野蛮な男も増えたことだし…≫
最後の一文は聞こえなかったフリをした方が良いのだろうか?
「…ホイルジャック?オイルですよ」
≪ああ、ありがとうナマエ≫
「…また何かお手伝いできることはありますか?」
≪勿論だとも。さぁ、また私の傍にいてくれよ?≫
「……はいっ!」
≪よし、ではアイアンハイドを呼びに行こうか≫
小さな拳と大きな拳を突き合わせて、一人と一体の科学者は武器兵を呼びに出かけた