・『グレン相談所』のSWとのお話
≪今朝、地球時間に換算して09時05分過ぎに起床。その際にお気に入りのキャラクター目覚まし時計を誤って落下させてしまっていた。09時07分寝ぼけ眼で洗面台に向かう。09時10分、脱衣開始。腹回りが0.5cm細くなっているのを確認。09時19分、朝食を摂る。メニューは昨日の夕飯の残り。09時32分、来客。相手は男の配達員。顔はしっかりと記憶した。09時58分、完食。10時20分、外出。行き先は先日OPENしたばかりのブティック。そこでホワイトのミニスカートを購入。ナマエによく似合うと思う。11時02分に近くのカフェで友人と待ち合わせ。此方は女。顔は覚えていない。11時20分には……≫
≪…………≫
本当にこの男、目を見張るほどの変態である
暇潰しついでにサウンドウェーブと話をしていたサイドウェイズは直ぐに帰りたくなった
そして地球に住んでいるナマエと言う人間の女が少し哀れにさえ思える。直接会話をしたことはなかったが、サウンドウェーブの話を聞いたり、仲の良いグレンの話や端から見る限りでは、人間の中でも比較的良い種類の奴そうなのに、このナマエと言う女、サウンドウェーブと対する時だけは途轍もなく豹変する、らしい
≪……サウンドウェーブ、グレンから聞いたナマエの言葉、全然こたえてないのか?≫
≪言葉とは?≫
≪『変態野郎は死ね』ってアレだよ≫
≪ああ、あれか いや?≫
≪……マジか≫
あれがどうかしたのか?みたいなツラでこっち見てくんなクソ野郎
言葉には出さないが、ブレインスキャンで此方の考えはあっちに駄々漏れだろう
その証拠に、サウンドウェーブのケーブルが脅すように怪しく蠢いている。すみませんでした
≪大体、今は地球に衛星向ける必要ないだろ。宇宙探索しなくちゃ、メガトロン様とスタースクリームに怒られるんじゃね?≫
≪俺を誰だと思っている?同時進行は当然だ≫
≪……地球の方と宇宙の方、割合は?≫
≪9:1だな≫
≪おい≫
まぁ、俺もあんまりサウンドウェーブに絡んでる暇はなかったりする。俺にだって割り振られた任務があるんだ
コンソール画面に向き直り、画面を開く。仕事、仕事…と気持ちを入れ替えようとした矢先、サウンドウェーブの方から≪むっ!!≫と言う声が聞こえてきた。これは、何があったと振り向いてやった方が良いだろうか
≪……一応訊く どした?≫
≪ナマエに危機が迫っている≫
≪は?≫
サウンドウェーブが睨みつけている空中の画面には、地球のナマエの姿とそのナマエを取り囲む数人の男達の姿が映し出されていた。ナマエの方は嫌そうな顔で、男達は楽しそうだ。これは、よろしくない事態だ。色々な相手への意味で
≪…あー、サウンドウェーブ?一応言っておくが、あまり派手な真似は…!?≫
こいつ、目の前でサテライトモードにトランスフォームしやがった!
ギゴガゴと身体を形成されて行くのに巻き込まれないように慌てて脇に避難する
容積も変化するのに気付いてないのかこいつは!!
≪ラヴィッジ、先行しろ。直ぐ追いつく≫
胸から射出されたのは、惑星モードのラヴィッジだろう
その弾道はずれることなく一直線に地球のある場所を目指して落下している
それから直ぐに、サウンドウェーブはトランスフォームして船から出て行った
急いで足取りを追うと、画面上のナマエと男達の姿、そして猛スピードで落下してきたラヴィッジがトランスフォームしてアースモードになる
――『い、隕石が化けモンに!?』
――『え、ラヴィッジ!?どうして貴方がここに…』
――≪グルルル…≫ラヴィッジは低く唸って男達を威嚇している。ナマエの顔が、俄かに強張ったのが見て取れた
――『……え゛ ま、まさか…』
画面の中の光景が慌しく、騒がしくなり、そして音割れを起こすぐらいの轟音を立てて、一体の衛星が降り立った
――≪ナマエから離れろ人間≫
降り立ったサウンドウェーブは、触手を伸ばして男達の首を次から次へと締め上げている。おいおい、目立ちすぎだぞあいつ
『ぐぁ゛っ…!』『ひぃっ…!』泡を吹きそうな程に苦しがっているらしい
ナマエがサウンドウェーブに駆け寄った
――『ちょ、サウンドウェーブ!何してるのよ!』
――≪見ての通りだ ナマエを助けている≫
――『それは有難いけど、目立ちすぎよ貴方!』
――≪ナマエが危機的状況下に陥っているのを確認して、居ても立ってもいられなくてな≫
そこでナマエはサッと顔を赤らめたが、「ん?」と何かに気付き、恐ろしい形相になる
――『……サウンドウェーブ?確認して、って、まさか、また、私のこと宇宙から監視してたの…?』
――≪・・・・・・・・・黙秘する≫
――『バレバレよ!サウンドウェーブ!!!』
――≪・・・・・つい≫
――『つい、じゃない!!』
――≪グルル…≫
――『ラヴィッジ、貴方はいいのよ、怒ってないから』
――≪ラヴィッジだけ狡いではないか≫
――『ラヴィッジが狡い、ってどの口が言ってるのかしら!!』
――≪――!ぬぉあ!≫
サウンドウェーブの奇声は、ナマエにケーブルを思い切り踏まれたからである
触手は男達の首から離れ、二人はすっかり二人だけの世界に入っていた
――『助けてくれたことには感謝してるけど、監視しないでよ!』
――≪しょうがないだろう ナマエの動向が、気になってしょうがないんだ≫
――『ならわざわざ宇宙から監視しなくったって、近くに居て見てればいいでしょう!?』
――≪……いて、いいのか?≫
――『…お、大人しく、変態行為をしなければ、よ?』
――≪了解した≫
サウンドウェーブはそう言って、サテライトモードからアースモードにトランスフォームし、メルセデスに擬態してみせる。ラヴィッジもトランスフォームして、元に戻った
――≪そうと決まれば直ぐにでも此処を離れよう。人間が大勢居て煩わしくてならない≫
――『…貴方がいるから集まってくるんでしょ…』
メルセデスが走り去ると、映像はもう後を追わずにそこで終了し、画面が途絶えた
一連の出来事を他人事のようにポカン、と見ていると
件のサウンドウェーブから通信が入った
≪そう言うわけだ メガトロン様たちにはよろしく言っておいてくれ≫
……って無理ぃ!!!