ナマエとナマエの恋人は、なんでも所謂『ケンカップル』とのことらしい
喧嘩をするのは仲がいい証拠、とばかりに毎日まいにち飽きもせず喧嘩をしてくる
車を持たないナマエの愛車、に事実上なってしまっている俺としては
シートを涙で濡らされるよりかは、パリッと革張りのままでいたいと願うのは当然のことだろう?
「聞いてよサイドスワイプ〜…」
≪またか?≫
「うん、また喧嘩しちゃった…」
≪もういつものことじゃないか≫
吹っ切れよ、とは言うが、喧嘩をして逐一落ち込むのはナマエだけだ
30分ぐらい泣き言を言えばすっきりするらしく、
俺は徹底的に聞き役に回るのが利口だと学んだ
≪今日はどうして喧嘩したんだ≫
「今日ね、アイツとの付き合い記念日なの」
≪…おお≫
「でも忘れてたの。酷いってよりかは、辛い!!」
≪はいはい≫
女々しい<男らしいナマエは、忘れられていて哀しいというよりかは、
自分は覚えてたのに向こうが忘れてるのが何か悔しい!とのこと、
人間てのはよく分からない
≪よし、じゃあ俺がお前らの仲直りの為に、一肌脱いでやろうか?≫
「ほんとっ!?」
≪ああ、ドライブにでもつれていってやるから、そこで仲直りしてラブラブ過ごせ≫
「やったー!相変わらずありがとうサイドスワイプー!」
≪もう見慣れてるからな、なんとも思わないから思う存分イチャついてくれて構わないぞ≫
「ほんと大好きサイドスワイプーっ!彼氏の次にー!!」
≪そうか≫
要するに、何故俺がここまでこのナマエに尽くすのかといわれると、
ひとえにナマエのその言葉が聞きたいだけである
何故だろう、ナマエが口にする『好き』は、とても心地いい
もっと言ってくれ、と言う気分になるが、これはどうやら真の使い道は彼氏に言うべきものらしく、あまり言ってはくれない
だからたまに言われるこの言葉を大切にする
何だかんだ言って、彼氏と楽しそうに過ごすナマエが一番見ていて気持ちが良い
いつまでも幸せになれ、と小さく呟いた
「今からこっち行くってー!」
≪よっしゃ、迎えに行ってやろうぜ≫
「おー!」