「レッドフットのお腹見てると、父親を思い出して切なくなる」
≪だったら、どうしろってんだぃ?ナマエ。そろそろ仕事に戻らねぇと≫
レッドフットの金属質な腹部に凭れ掛かっても柔らかさや快適さは皆無だ。冷たい温度が背中越しに伝わってくる。当たり前だ。だって彼は金属生命体なのだから
「もう駄目ーおとーさん、私もう動けなーい」
≪餓鬼じゃあるめぇに何泣き言言ってんだ!おら、とっとと立てナマエ!≫
「運んでー」
≪現場主任のオメェさんがそんなんでどうすんだ!!≫
「わあっ!!」
レッドフットに足を掴まれ、肩に持ち上げられる。世界が逆さまに見える。うえ、頭に血が
「ごめんなさい〜シャキッと、するから、すみま、せん、ちょ、起き、上がらせ…て」
≪自力で起き上がるこったな≫
「お父さん鬼……」
≪だーれがお前さんの親ってんだ!≫
腹筋の力を使ってどうにか起き上がり、レッドフットの頭部に腕を回してしがみつく。
懐かしい。小さい頃に父親にしてもらった肩車のようだ
「高いねぇ、レッドフット」
≪俺のそこで寛げんのはお前さんぐらいなモンだぜ?≫
「やっぱりレッドフット、私のお父さんみたい。生まれ変わり?」
≪バカ言ってんじゃねぇぞ?ナマエ≫
擦れ違うエップスに、「楽しそうじゃねぇか」と声を掛けられる。「エップスも乗ってみる?」と言えば、レッドフットが≪勘弁してくれや≫と呆れた
「あれ?女の子しか乗せない主義?野郎は乗せないって?」
≪お前さんだけで良いぞ≫
「私だけ?」
≪充分だ≫
機嫌を良くしたのか、自身の腹部をポンと景気良く叩いてみせる
その仕草が人間らしくて笑った
「走ってレッドフット!このままじゃ休憩時間の終わりに間に合わなくなっちゃう」
≪そいつぁいけねぇな トップとロードに叱られちまわあ≫
「だから急いでー」
≪如何せん、どうにもこのパーツが邪魔でなぁ…走るのは苦手なんだ≫
自分の腹部を指差して、困ったように排気を吐くレッドフット。それでも急がねばならない、と思っているのか、≪ッホ、ッホ≫と声を出し、ドスンドスンと足音を鳴らしながら小走りになる。
そんなレッドフットが面白くてまた笑って、彼の肩の上で揺れる振動に身を任せながら、少し眠たくなった