自室部屋のドアを、遠慮がちにコンコンと叩いたのは予想外の訪問者
「…どうかされたのですか?オプティマス」
≪……迷惑だったかな?≫
「ああ、いえいえそんなことはっ」
部屋着を正し、髪の毛の荒具合を手でどうにか押さえつける。
隊員達の宿舎の窓から手を伸ばし、私の部屋のドアを叩いたであろうオプティマス
もう時刻は深夜も近い。未だ寝に入っていなくて良かった。あんな小さい音じゃ、気付けなかったから
≪…申し訳ないのだが、その…≫
「…?」
発言する前に、よく熟慮し言葉を選ぶオプティマスにしては、
今日は何処となく言いよどんでいる、と言う表現が正しい様子だ
≪……今日は一日中青天だった≫
「そう、ですね?」
≪今日の夜空に雲はない。だから…≫
「だから?」
≪…明日も、晴れだろう≫
「はぁ…そうですね。嬉しいことですね」
私の相槌がいけなかったのかな?と心配になったが、
オプティマスは、ああ違うんだ、と声をあげ、目頭を押さえるようなポーズを取る
≪…今日の夜空に雲はないことと相俟って、星がよく見えるんだ≫
「ええ…あ、ほんと!」
海と山に囲まれたこの基地からはよく星空が綺麗に見える。久しぶりに空を見上げた
≪だから…その……今日の夜空は、とても綺麗だ。だから…≫
「…?」
≪……私と、一緒に、星を見てはくれないか…?≫
素っ頓狂な声が出た。目玉が飛び出すかと思った。それぐらい驚いた
まさか、訪問者がそんな爆弾発言をするなどと、夢にも思っていなかったのだから
「…よ、喜んでオプティマス!」
≪そうか…≫
カシャン、と瞬いたオプティマスから喜びが伝わってくるようだ
遠慮がちに差し伸べられた巨大な掌にそっと乗り上げる。「失礼、します」≪ああ≫そう言ってオプティマスは、ゆっくりと歩き出し、夜空のよく見える、小高い丘へと目指す
私と夜空が見たくて、誘い文句を言いたかったのだろうオプティマスが、
明日の天気だの青天だのと遠回しに言葉を紡いでいたのが、
普段は厳かで気高いオプティマスが愛らしく感じられた。
私のすぐ隣にあるオプティマスの顔を夜空観賞の合間に盗み見る
真っ直ぐに星空を見ている彼のカメラアイの青白い光が、空の星空を映し反射していた。
そこにも、一つの銀河が広がっていた