≪・・・・・これは、ここ押して使うのか…?≫
「そうだよ? サイドスワイプ、ちゃんとカメラの使い方webで調べなかったの?」
≪調べたさ!でも、実物を触ってみたらすごく小さくて戸惑ってるだけだ!≫
「そうなの〜?」
――カメラって何だ
サイドスワイプが珍しく真面目な顔して言ってきたから、こっちは友人に頼んで本物のレフ眼を貸してもらったんだ
壊したりしないかと、サイドスワイプの手の中にあることでより小さく見えるカメラを心配する
ファインダーをカメラアイで覗き込んでみたり、レンズを伸ばしたり縮めたり、と
色んなところを触りながら試行錯誤を繰り返している頭上のサイドスワイプを見上げる
とても面白い光景だ。知識だけでは役に立たないから実物を見る、なんてサイドスワイプらしい
「試しに何かを撮ってみればいいじゃない」
≪何か?何をだ≫
「それはサイドスワイプが決めていいのよ?何か撮りたいものとかないの?」
シャッターボタン近くをウロウロと彷徨っていたサイドスワイプの指が、ボタンの少し上で固定される
キョロキョロと辺りを見渡して、被写体を探していたサイドスワイプが、ふと足元に視線を寄越した
「?サイド――…」
カシャッ
聞き慣れたシャッター音
「…え?うそ、もしかしてサイドスワイプ、今撮ったの?」
≪多分な。あれで撮れてる、って表現してもいいなら、撮れたんじゃないか?≫
「…最初の被写体が、私でよかったの?」
≪…まぁ、良かったけど、俺は≫
「…サイドスワイプがいいなら、私は全然いいんだけど」
カメラを横から見たり上から眺めたりと、動かしていたサイドスワイプが首を傾げる
≪なぁ、ナマエ 写真はどこから出てくるんだ?≫
「…カメラからは出ないよ。現像するの」
≪現像?≫
「プリントするのよー」
それから暫く、新しい玩具、もとい遊び道具を見つけたとばかりに
サイドスワイプはカメラを手放さなかった
後で、フィルムが一杯になり、友人に現像を頼んだところ、
出来た写真の七割半に私が写っていたことによって友人に死ぬほどからかわれてしまった