地方支部から1日中休まずに走ってきた。サイドスワイプは≪疲れていない。まだ走れるぞ≫と言ってくれたけど、別段急いで帰る必要もないし、仲間内にはもう連絡は行き渡っている。小休止したって怒られやしないだろう
街中を少し外れて、人通りも少なくなった裏通りにサイドスワイプを誘導する。
閑静なこの住宅街で、銀色の輝かしいコルベットは不釣合いなような気もしたけど、しょうがない
「ちょっと此処で待ってて、サイドスワイプ。飲み物買ってくるから」
≪ああ 気をつけてな≫
「これは任務じゃないわよ?」
ピカピカ、とライトを二度点灯させて応えたサイドスワイプに笑顔を返した
最近のジュースは何でも甘くしすぎ…飲んでいても直ぐに喉が乾いてしまっちゃ意味がないよ
自販機の隣にあったゴミ箱に缶を投げ捨てる。サイドスワイプが此方を見ながら、早く行くぞ、とでも言うようにエンジンを勝手に起動させる。ちょっと待ってよ
「サ…ッ!」
発した声が中途半端に途切れる。
理由は、何処から現れたのか厳つい男達の登場によって、だ
6人組みの男達は、それぞれ下卑た笑みを浮かべている。
普通の女なら怯えるだろう。だがこっちは、曲がりなりにも軍人だ
この男達より厳つい男達に囲まれて、過ごしてきているんだ
「……何か?」
「暇なんだろ?」
「…はい?」
「こんな真昼間からお一人で…寂しいだろ?ネェチャン」
「幾らだ?買ってやろうか」
「…結構よ。急いでるの、どいて」
真ん中で道を塞いでいた一際ガタイの良い男の胸を押す。びくともしない。これだから、体格にモノ言わせてでかい態度をとる男は嫌いなんだ
「なかなか強気だなぁネェチャン」
「おい、もうイイから連れてけよ」
「…!離しなさいよ…!」
背後から腹に腕を回されて片足で足を押さえつけられた。押さえつけ慣れているな、この男達
「…っ、離せ!」
「おいおい、いい加減大人しくしろって!」
「丸腰のネェチャンがどうこう足掻いたってしょうがねぇんだよ!」
≪丸腰じゃないぜ?俺がいる≫
「!?」
「な…!」
「サイドスワイプ!!」
いつの間に背後に立っていたのか。隠しもせず、すっかりロボットモードの姿を皆に晒してしまっているサイドスワイプは、そんなことにも気付いてないのか、左右のアームブレードで、ナマエの前に立っていた男と、ナマエを背後から抱きすくめていた男の首を狙っている。カメラアイがマジだ。ギラギラと青い光を輝かしている
「な、な、ば、化けモン…!」
≪さぁ、人間共。このまま首と胴体をお去らばしたくなけりゃ、その薄汚い手をナマエから離すことだな≫
サイドスワイプがギン、と睨むと、先ほどまで大きく出ていた男達の手がナマエから離れる。恐る恐るであるが、後退さえしている
そんな男達を見て、サイドスワイプがバカにしたように笑った
≪フン、それが賢明な選択だ 行くぞ、ナマエ≫
「あ…う、うん」
ナマエの身体を下から救い上げると、サイドスワイプは目にも留まらぬ速さでトランスフォームし、エンジンを吹かしてその場を走り去った
座席越しに振り返れば、未だ男達は呆然と此方を見送っている姿が見えた
フゥ、と座席に深く座り直す
「…ありがとう、サイドスワイプ 助かっちゃった」
≪あんな男達でも、やっぱりナマエより強いんだな≫
「それ、どういう意味?人数の問題よ。あれが3人だったら余裕なのに!」
≪……ま、怪我がなくて安心だぜ≫
「サイドスワイプが助けに来てくれたからね。ありがとう!」
≪いや?直前までどうするか悩んでたんだぜ?このままナマエを助ける為に擬態を解くか解かざるべきか…ってな≫
「あ、それは酷いね」
≪ちゃんと助けたんだから、文句はないだろ?≫
「…まあねー」
ブレードを構えながら、自分の身を護ってくれたサイドスワイプに、ほんのちょっとときめいてしまったりしたが、それはサイドスワイプに伝えたほうがいいのかな?