スカイハンマーはとても優秀な戦士だ。オプティマスからも認められている数少ないオートボット達の中でも航空部隊を率いることの出来るほどの実力者であり、有事の際にも冷静に的確に全員に行き渡るような指令を出して全員生きて帰る任務、と言うのを最大の目標にしている、完璧な存在であった。 …筈だった
≪ナマエ、疲れたんじゃないのか?そろそろ休憩にしないか≫
「大丈夫ですよスカイハンマー。まだ後少しやりましょう。終わらせられますから」
≪そうか…?だが無理はするなよ。すぐに俺を頼ってくれな≫
「はい、勿論です」
端から見れば何と仲睦まじい人間とオートボットの交流、と思うだろう。スカイハンマーが相棒である人間の体調を慮り、心配するのも道理だと言える。多少過保護気味ではあるような気がするが、それも情愛だと思えば頷ける。良い事だ
≪スカイハンマー指揮官 与えられた仕事が粗方片付きました。我々は如何すればよろしいでしょうか?≫
≪何を言っているんだ、次の仕事を勿論与えるに決まっている。休むなよ?≫
≪は…≫
これだ
いや、スカイハンマーが言っていることには何の問題はない。まだまだ今日の内に終わらせなければならない事はまだまだ山積みだ。休んでいる暇もない。
だがギャップがあるのだ
今の今までナマエに向けていた視線と、指示を仰ぎに来た部下を見る目
ナマエ専用、とまで言われている優しい声音はナリを顰め、厳しい上官である声
そしてナマエに掛ける言葉との微妙なニュアンスの違い
それのせいで、部下達はスカイハンマーの機嫌を何か損ねてしまったのではないか、といつもビクビクしてしまうのだ。誤解はしないでほしい。スカイハンマーは"普段から"こうだ。部下達も、スカイハンマーが一人でいるときにこの指示を受けたとしたら何も言わず何も思わなかったことだろう。
しかしナマエと共にいるスカイハンマーは基本的にナマエのことしか考えていない。
一部では親愛だ、いや完全なる愛情だ何だと噂が飛び交っているほどにスカイハンマーは相棒であるナマエを愛し、ナマエはそのスカイハンマーの寵愛を一心に受けていた。
≪…そうだ よし、お前たち。ここからナマエの仕事を持っていけ≫
≪え!?≫
≪そうすればナマエの仕事の量も減るしお前達にも仕事が出来る。一石二鳥だ≫
どこがだ!!! …言えるわけもない
「あ、あの スカイハンマー?」
≪ん?何だ、ナマエ≫
「私は大丈夫ですから。皆さんに手伝って貰う必要はありません」
≪…別に彼等に任せても構わないんだぞ?ナマエは人間だ、我等トランスフォーマーとは違って疲れやすいだろう。だから休んでほしいんだ≫
「心遣いは嬉しいですが、自分に与えられた仕事は自分で終わらせますから。気にしないでください?」
≪…そうか≫
さっきまでナマエに向けていた柔らかな光を戻し、厳しい青色の光をアイセンサーに灯し、スカイハンマーは部下達の方へ振り返った。必然と部下達の背筋がシャキっと伸びる
≪…聞いた通りだ。ナマエの心遣いに感謝するんだな≫
≪あ、ありがとうございますナマエさん≫
「い、いえ そんな畏まらなくても…」
≪なのでお前達は、今から俺と共に人間側から支給された物資や武器を輸送する任務に向かう≫
≪えー!?い、今からですか!?≫
≪そうだ。何か文句でもあるのか?≫
≪い、いえいえいえいえ!≫
≪よし ……じゃあナマエ、行って来るよ≫
「あ、はい スカイハンマー。皆さん、お気をつけて」
≪ああ≫
おい、何で頬にキスする必要があったんだ指揮官やい
何て口を挟める筈もなく、意気揚々と歩いて行くスカイハンマーの後ろを
部下達は若干呆れながらも尊敬する指揮官の許へと急いだ