「ナマエってスペリオンと仲がいいのか?」
とキッカーに世間話ついでに訊かれたのなら、「…ほどほどに?」と悪意なく答えるのがナマエで、
船の搭乗員であるキッカーとナマエの二人の会話をたまたま耳にして理由の分からない感情に落ち込んでしまったのがここで三角座りをしているスペリオンだ
現代に蘇った古代兵士であるスペリオンはその性格や人格的にあまり社交的ではなかった
いつもサイバトロンの仲間たちの輪から一歩離れた場所に立って、
仲間たちが話す作戦や計画について聴覚センサーを傾けている
それは決して"参加していない"と言うことではないのだが、
どこか遠慮がちになってしまうのは、もう生来のものであるから治しようがないことも、スペリオン本人も自覚していた
自分はナマエとよく話をする、出来ていると思っていただけに、
彼女の「程ほど」と言う発言はショックを受けてしまった。
勿論、否定的な言葉が返されるより何倍もマシなのだが、
いつの間にか貪欲になっていたらしい自分のスパークが恨めしい。自覚しろ、立場を弁えろスペリオン、と自分自身を厳しく叱咤する
「 スペリオン?」
≪はぁっ!? あ、ナマエ…さん…≫
「どうしたの?こんなところに座り込んじゃって」
天井に頭でもぶつけちゃった? ニッコリと笑うナマエの顔はいつもと変わらない表情だ
さっきのことがなければ、スペリオンもその笑顔を見て笑みを返せたかもしれないが、
今はとてもそんな気分になれない。とても女々しくて嫌になってしまう
≪……ナマエさんは、≫
「ん?」
≪…その……俺の性格をどう思う≫
「スペリオンの性格?」
≪え、えぇ…≫
「それって、 正義感があって仲間思いで皆を立てるのが上手くてどんな戦場にも飛び出して行っちゃう勇気溢れる性格 がどうかって意味?」
≪…え≫
凄いと思うよスペリオンのそう言うところ!他のサイバトロンの皆は割と直情的で考えなしに……ごほん、ストレートに仕掛けてっちゃうところがあるから、スペリオンみたいに周りの状況を把握して動けるのって凄いと思うな!
≪そ、そうかな…?≫
「ええ! 凄いわ」
≪……ナマエさんは、俺のことをどう思ってますか≫
「あれ!?いきなり質問が変わったね 勿論好きですよ!大切な仲間だもの」
" 好きですよ "
しっかりメモリーに録画してしまった自分が情けなくもあり、
こんな小さな人間の言葉だけで蛮勇ともなれそうな自分が、誇らしくもあった
≪…ありがとう、ナマエさん 俺は必ず、貴女の為にこの宇宙での戦いを終わらせてみせるよ≫
「……頼もしさが桁違いだねスペリオン うん!私も精一杯サポートさせてもらうね!」
≪ああ≫
そしてこれは後になってキッカーからスペリオンが訊いた話によるのだが、
ナマエの生まれ故郷は日本と言う場所で、そこに住む人間は"謙遜"をするのがお国柄らしく、
スペリオンとの仲の良さを訪ねられ、相手が――この場合はスペリオン――どう思っているのかが分からないのに「仲がいいです!」と断定するのは憚られたのだと言う
良かったよかった、そう言う事だったかと安心したスペリオンだったが、
新たに"何故キッカーには話せて自分には話してくれなかったのだろう"と言う悩みが生まれた。
スペリオンの頭はいつも常に何かによって悩まされ続けているらしい