(過去作品の加筆修正版)
――友人に誘われて付いて行ったクラブで知り合った男性に、帰り際、「家をプレゼントしよう!」と言われた。
勿論丁重にお断りの返事をしたのに、その男性はとてもしつこくて、
「ぼくは有名な企業家だから金もある」、
「女性は大事にするようちのママのようにね!」
と自己主張を始め、今も執拗なアプローチを続けて来られていて、とても困っている。
同伴していた友人にそれを言っても「羨ましい!」「受ければいいじゃない!」しか言わない。
そんな、簡単な。家を贈られると言うことは即ち、相手はプロポーズしてきてるってことだよね。
好きでもない、その上会ったばかりのよく知らない男に言われても、ちっとも嬉しくなんてない。
このことはもう、友人には相談出来ない。他の第三者に助けを求めよう。
そして選んだのがこの二人だったのだけれど。
≪大丈夫だよナマエ。君と僕の新居は僕が建設してあげるからね≫
≪何を言っているんだグラップル。ナマエと私の新居だ、私に任せて貰おう≫
≪僕とナマエだ≫
≪いいや、ナマエと私のだ≫
「・・・・私の話、ちゃんと聞いてくれてました?」
グラップルとホイスト。
この2人にその男性のことを相談したら、返って来た返答がコレだ。
私の説明の仕方が悪かったのかな、と思ったけど、何も悪かったところは見つからない。
伝わり切れなかったのかな。
「私はね、その男の人の申し出を失礼のないように断る方法は無いのかってことを相談したくて…」
≪だから簡単だよナマエ。君が、既にその男から貰う家以上の家に住んでいたらいいのさ≫
≪そうすれば男も諦めるだろう。キレイさっぱりすっかりとね!≫
「・・・・・」
感覚が人と違うのは金属生命体だから致し方ないのかもしれないが、それでも
「…そこでどうして、ホイストかグラップルのどちらかと同居してなきゃならないの?」
≪もうすで付き合っている恋人がいると分かれば、その男も君にアプローチをかけてこないだろう≫
「あ、なるほど…」
いや待とう私。今の会話の何に「なるほど」だったの?
≪だから、ナマエの恋人は私がやるよ≫
≪いいや、ナマエの恋人は私がやろう≫
「・・・・」
また話が戻ってしまった。
からかわれているのだろうか?いやでもそんな二人じゃないのは知っている。
二人がいかに頼もしくて優しくて強い男性(男性?)なのかも理解しているし、恋人にするのにも申し分はないだろう。
でも今の議題はそこじゃない。
二人とも、喧嘩を始めないで欲しい。お願いだから。
「…とりあえず、落ち着こう。二人とも」
≪……しかし、その人間の男も 数いる人間の女性陣の中からナマエを見初めたその審美眼は評価できるね≫
≪確かにそれは一理ある。今度共にオイルを飲み交わしたいな!≫
≪勿論話題はナマエのことでね!≫
「ちょ、ちょちょちょっ、ストップ!」
話の筋が猛スピードで脱線して行ってるから!