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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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あいのかたち?


!64万企画小説
!主人公が悲惨な目に遭っていますので注意してください


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まだ、全てが二つに別れてしまう前。
センターホールで情報管理官として働いていたナマエの仕事ぶりは、同僚からも上司からも後輩からも認められていた。
『生真面目すぎるトランスフォーマー』と評されることも多かった彼女はとにかく働き者で、≪その綺麗な青い目を真っ赤にさせるまで働く気か?≫とよく皆から揶揄かわれていた。
ナマエのボディは一般的なスタイルの、量産されたプロトフォームを独自にアレンジしただけの質素なつくりをしている。
けれど自分のこの青い目のことは ナマエも気に入っていた。
青々としたセンサーの周りを白い粒子が飛び交っているのだ。これはナマエのボディが精製された際に起きたエラーが原因だったが、性能としては何の問題も起きていない。丸い球体の中を 光の粒子がクルクルと回っている。










≪ いつ見ても良いモノだな≫


ナマエの胸から上だけを残して下半身全てを切断ししたロックダウンはとても満足していた。
テメノス内にある監獄に隔離することもせず、比較的コンパクト、かつ持ち運びしやすい大きさの生命維持装置の中で、ケーブルを繋いで生かし続けてあるこの女オートボットの"目"がとても欲しくなり、手に入れてからずっとこの調子だった。

ロックダウンのコレクションの幅は、存外多種多様である。
死体や武器や剥ぎ取ったパーツの一部などはただの「戦利品」でしかないが、趣味嗜好品に分類されるものも多くあった。
その内の一つが、この白く光る青い眼だ。
宇宙間を漂流していた小さな宇宙船を見つけた時は大した戦果は得られないだろうと思っていたが、まさか乗組員の一人からこんなモノが見つけられるとは。


≪……、……… ……≫
≪おい瞬きをするんじゃない。飾っている意味が無いだろうが≫
≪………ぁ………≫


ナマエは、『生真面目すぎるトランスフォーマー』である。
なので自分が今とても陰惨かつ残酷な現状に陥っているにも関わらず、他者からの指摘に従順に従った。青い目の中の光たちが、またクルクルと回り出す。ロックダウンは上機嫌だ。≪それでいい≫なんてらしくなく褒めて来たことから察せられる。
もしロックダウンの機嫌を損なえば、目の光を保つために取り付けられている生命維持装置ごと破棄されるだろう。
テメノスの操縦席に腰掛けているロックダウンの足元に寝そべっていたスチールジョーも、いつも涎を垂らしながら装置の中のナマエを見てくる。もしかすれば最期は彼らに食べられるのかも知れない。



≪…… …≫
≪…ん? どうした。何故感情の波を荒立たせた?≫


嫌だ。いやだ。いやだナマエは死にたくない死にたくないしにたくない生きたいああせっかくセンターホールが所有していた小型船を奪取して人知れず戦争が激化したセイバートロン星から宇宙空間へと逃れることができた矢先にバウンティハンターとして悪名を馳せていたロックダウンに捕まってしまうなんて不幸にも程がありますプライマス様なぜなのですかナマエはあなたからスパークを分け与えられた時からずっと恥ずかしくない生き方をしてきていたと言いますのにどうしてどうしてどうし て



≪……ほう。感情が怒りに支配されると色が赤くなるのか。つくづく面白い構造をしているようだな≫
≪いやです…イヤデ、ス……死にたく---死に…ナイ……≫
≪ああ喚くな。心配せずともあと40万年ほどはオレの手元に置いておいてやる≫
≪………、……≫


ロックダウンが主であるテメノスは、今日も惑星間を運行している。当てがない旅である内が花だ。漫然とした生活さえ送れていればロックダウンはコレクションを処分したり他の惑星の者達相手に取引を持ちかけたりはしない。手元近くに置かれ、大事にされているナマエはまだ「コレクション」達の中では優遇されている。ナマエの僅かな聴覚センサーには毎日、獣の呻き声のようなものが聞こえてくることがままあった。


≪ほら、オレの方を見ていねぇか 目はいつも此方に向けていろ≫


――ナマエは考える事をやめた。全センサーを全て目の前の持ち主へと向ける。
アイセンサーは鈍い光を放つのを止め、また爛々と輝き始めた。

ロックダウンはそれを 至極ご満悦そうに見ていた。