TF女主ログ | ナノ
×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
君の最初のファン



「まさか、初めて出来たファンがロボットだとは思わなかった」

≪そうか、私が君のファン第一号なのか。これは嬉しいな≫




ストリートミュージシャンの活動をしながら、金にもならない歌を作り続け、日がな一日を過ごしていた私の前に、一台のポルシェが止まった。どこの金持ちが立ち退きを要求してくるのかと身構えたが、誰も降りてこない。それどころか、どこからともなく≪素晴らしいな君の歌は。もっと聴かせてくれ≫と催促の声。もう気にしていられるか、と諦めた私は止めていた歌を歌いなおす。
ポルシェは発進せず、じっとその場に留まって、歌に聞き入ってくれているようだった。
今まで誰一人として足を止めてくれることのなかった私の歌に、止まってくれたのはこのポルシェが初めてだった。私は平静を保ちながらも、内心は凄く喜んでいたのだ



「……終わり、です」

≪素晴らしい。君の声は心地いいな≫

「ありがとうございます。……あの、降りて顔を見せてくれませんか?初めてのお客さんなんです」

≪ああ、これは失礼?≫

「なっ……!」




ポルシェは立ち上がり、優しそうな顔をしたロボットに変身した。いや、ロボットが車に変身していたのかもしれない。噂には聞いていたトランスフォーマーだ



「…びっくり、ロボットも歌を嗜むの?」

≪まあ、私と一部の者たちだけだがね≫

「へぇ…」

≪それより、もっと聴かせてくれないか?君の声をもっと聴きたいんだ≫

「よ、喜んで」



そんなことは言われたことがなくて恥ずかしくなる。
次の曲のためにギターのチューニングを直していると、目の前のロボットはああ、と思い出したように声を出した



≪私はマイスターだ。お嬢さん、君のお名前は?≫

「あ…ナマエです」

≪ナマエ、良い名だね≫

「ありがとう… あの、それじゃあ座って聴いてくれませんか?立っていられると、落ち着かなくて…」

≪ああ、すまない。お金は持ってないんだが、構わないかな?≫

「はい、ぜんぜん」



マイスターと言うロボットは地面に腰を落ち着けて、バイザー越しに私をじっと見てくる。もしかしたら、目を閉じて聴く体勢に入っているのかもしれない

目の前の初めてのファンに顔が綻び、歌い始める。いつもより、数倍この歌が好きになった