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ひまわり畑のエイリアン


・三番街のドリーマー 続編









居心地は悪くないのだけれど、ただ向けられる視線が少し痛い




プロールはきちんとナマエとの約束を守った。
いつものように忙しくない穏やかな日中を店先でのんびりと過ごしていたナマエの許に駆け込んできた黒いロボット――プロールの顔は笑顔だった



≪ナマエ!邪魔するである!≫

「プロールさん!いらっしゃいま…」

≪ナマエ、今すぐ付き合って貰えるか!≫

「え?」



緩く引かれた手に引っ張られ、外に連れ出される。意味も分からないままにCloseの看板をどうにか下げ鍵を閉め、バイクに変形したプロールに乗れと促されるままに跨った


「ど、何処に行くんですかプロールさん そもそも私、バイク乗れな…」

≪我々の基地である 運転なら心配はない。ナマエはハンドルをしっかり握っているだけで良い≫

「基地!?…って、わあぁっ!!」



勢いよくエンジンを鳴らし、困惑するナマエを置いてプロールは走り出した

その向かった先が、地球にやって来たトランスフォーマーのオートボット軍の臨時基地だと言うこの廃墟



入り口に入ってすぐ、TVでプロールと共によく見かけていた黄色いロボットと緑色のロボットからの好奇心を含んだ視線の攻撃を受ける
あれがプロールの…、だの プロールが大切にしてるあの木を買ったとこの…と言う、
内緒話にもなっていない声が耳に入ってきて余計に居心地が悪い
ナマエを連れて来たプロールは、ナマエに入り口で少し待っていてくれ、と言い残して何処かに行ってしまっていた
早く帰って来てください、プロールさん…っ、と心の中で助けを求めてみたが効果は見られない



≪ねぇバンブルビー 僕ら、すっごくこの人を怖がらせてなーい?≫

≪え?どうしてさ そんなに僕ら怖い顔してる?アイアンハイドだけじゃないの?≫

≪うーーん……≫

≪うーーん……≫

「……………」



お互いの顔を見ながら唸り出したバンブルビーとアイアンハイドと言う二人にはついていけない
どうしようも出来なくて身を縮こませながら俯いていると、漸くプロールが姿を現した


≪待たせてすまないである、ナマエ≫

「あっ…プロールさん!」


≪わ…プロールが来た途端のあの笑顔だよアイアンハイド≫

≪何かちょっとショックだね≫

≪お前達が不躾にナマエに視線を送るからだろう!少しは慎んだらどうだ≫

≪はーい≫



じゃ、ナマエさんごゆっくり〜 また後でお話しようね〜 と陽気に声を掛けながら2人は去って行った。存外に、良い人ではあるのかもしれない

そんな2人に溜息を吐いて見送っていたプロールは、

こっちである、とナマエの体を両手で救い上げながら歩き出した



「……!?」



高くなった目線と今の自分の状況に目を白黒させるしかない。動悸が早くなった



案内された所は、太陽の光が入ってくる吹き抜けの中で枝を伸ばす、いつかの苗の成長した姿が目に飛び込んで来る、静かな自然で溢れる部屋だった
一瞬で悟る。此処がプロールさんの自室か、と



≪…何もない部屋ですまないである≫

「い、いいえ!そんなことないです 綺麗な部屋ですね!」

≪そ、そうであるか……≫



そっと木の根元に下ろされ、下から見上げる木の何と大きなこと
プロールさんがうちのお店で苗を買ってから此処まで成長するのに必要と思われる年数は経っていないはずなのに



「…この木、普通に生長してこうなったんですか?」

≪ああいや…普通に育てるのでは、余りに時間が掛かり過ぎる。だから仲間に協力して貰って、生長薬を作って貰ったのだ≫

「そうですよね…何年もかかっちゃいますもんね。悠長に育ててたら、皆さんが地球にいる時間とかが押してくるとか…」

≪い、いや…そうじゃ…いや、それもあるが、もっと別の理由である≫

「別の理由?他に何かあるんですか?」

≪……その… 早く、君に…見せようと、≫



たどたどしく呟かれた言葉に、ナマエは赤面する
その言葉の真意がどうであれ、プロールが自分の事を想って行動してくれたことが嬉しかったのだ
確かにこの木がこんなに大きく生長するにはこの先何十年とかかったことだろう
一体どんなテクノロジーを使ったのかは分からないけれど、その生長薬と言うものの威力は凄いな、と関心した



「そ、そうですか!ありがとうございます、嬉しいです」

≪い、いや…≫

「あ、で、でも、もうこんなに生長しちゃったら、お世話とかもうしなくても良いんじゃないですか?」

≪そう言うわけではないようだな……こまめに手入れをしないと葉が無造作に伸び生えてしまうし、虫に幹を食われてないかと点検する必要もあるし……≫

「へぇ…」

≪いやどうして、植物の世話は楽ではないであるな≫

「そうみたいですね」



嬉しかった。自分の店で買われていった、祖父の大切にしていた苗をこんなに大切に世話をしてくれる…ロボットが居るなんて
最早この木を見ているだけで嬉しくなる。この木が立派に生長しているこの姿こそが、プロール自身の優しい性格を現しているようだった



「…太陽の光が射して、とても綺麗ですね」

≪……そうであるな…≫

「また、見に来てもいいですか?」

≪!勿論である また迎えに行こう≫

「ありがとうございます、プロールさんっ」

≪あ、ああ…!≫