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「#幼馴染」のBL小説を読む
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よろしい、ならば戦いの始まりだ


・なるほど、世界じゃコレを恋と呼ぶのか 続編







≪ジャズにナマエを教えるんじゃなかった≫



苦々しげに呟かれたサイドスワイプの言葉
不貞腐れたような、不機嫌なような、大切な何かを他に取られてしまったような、
面白くない、と言いたげな珍しい表情を浮かべているこのクールな友に
ラチェットは今取り込んでいる作業を中断せずに呵々と笑った



≪まあそう言うな。ジャズはただお前さんを揶揄っているだけだろう≫

≪……余計に性質が悪いぞ、それ≫



ラボに積まれていたコンテナに寄りかかり、サイドスワイプは昨日の出来事を思い出す

ジャズにドライブに連れて行かれたナマエ
追いかけようとしたが、その後にアイアンハイドに呼ばれてしまいやむを得ず諦めた
数時間して帰って来たナマエとジャズに詰め寄っても、
「楽しかったよー」だの≪何もしてないから安心しろよスワイパー≫とはぐらかされるばかりでサイドスワイプの機嫌は治らない
その後にナマエが話しかけてきてくれたが、話す気分になれずに素っ気のない返事しか返せなかった

時間が経過して後悔する。幼稚じみていた自分の行動に、取り返しの付かない恥ずかしさ


今日はアレからまだナマエと話をしていない
アイアンハイドとの稽古もなかったから、こうしてラチェットのラボに逃げ込んできた
ラチェットは多くを話さなくても全てを察する力があったから



≪くそ……ジャズの奴…≫

≪おや、噂をすればのようだぞサイドスワイプ≫

≪え…? ――!≫


ラチェットのラボの前で停車したソルスティスがトランスフォームし、ジャズが立ち上がる
よっ!等と人の気も知らないで陽気に挨拶をしてくるジャズに…よ、とだけしか返せない自分はまだ幼稚くさかった



≪何だ、機嫌が悪いな。昨日のことまだ起こってるのか?≫

≪……別に怒ってなんかいない≫

≪本当か?ナマエが心配してたんだぜ≫

≪な、何て≫

≪「今日はサイドスワイプの顔を見てないんですー…ジャズさん知りませんか?」ってな≫

≪・・・・・・≫



録音していたのであろうナマエの声で説明されても、
何でナマエの声を録音しているんだこの野郎、としか思えなかった

しかしナマエが己の事を探しているのなら話は別
寄りかかっていたコンテナから身を起こし、ラボから出ようと動けば
ジャズはすかさずサイドスワイプの背中に声をかけた



≪会いに行ってやるのか?色男め≫

≪……ジャズ、何が言いたいんだ?≫

≪いや?ほら、早く行ってやれよ≫

≪お前に言われなくったって分かってる!≫



言うや否や駆け出していったサイドスワイプを見送りながら、ジャズは先ほどまでサイドスワイプが寄りかかっていたコンテナの上に飛び上がり座り込む
一部始終を黙って聞いていたラチェットが、ジャズの方を見やり笑いながら声をかけた



≪行かせても良かったのか?≫

≪…男だからな。余裕を持って戦いに臨む、平等な条件で戦う、が俺のモットーでね≫

≪ほう ナマエと言う人間の女をかけたトランスフォーマー同士の戦いか。ノックアウトやジョルト等が騒ぎ立てそうだな≫

≪よせよ。見世物にする気はないぜ≫



そっぽを向いたジャズに、ラチェットはこの似た者同士め、と声帯モジュール内部で呟いた















こんなことでどうする

何故自分が、ナマエが相棒である自分を置いて他のオートボットと出かけたからと行って、それに嫉妬なんてしなければならないのか

確かに人間との交流も大切だ
だがそれ以上にジャズは同じ種族の仲間ではないか
その仲間であるジャズと険悪な関係にはなりたくはない
これからの長い年月を考えたらどう考えても其方の方がお利口な考えじゃないか、とサイドスワイプは思った
先ほどのジャズとのやり取りを反省して出した結果だった
サイドスワイプは理性で動くような存在ではない
いつも何が最善であるかを考えて動くことを良しとしていた

そうだ、ナマエも大切だが、そんなことで同じ仲間を大切にしないのもおかしい
仲違いをするのはディセプティコンの奴等だけで充分じゃないか




ふらふらとナマエを彷徨いながら基地内を移動していると、
前方の一画にその姿を発見し、近寄るかどうかを考えあぐねていると向こうの方からサイドスワイプに気が付いたようだ



「あ、サイドスワイプー」

≪…あ、ああ…ナマエ 俺を探してたんだって?≫

「え、うん 今日、会ってなかったから 会いたくて」

≪・・・≫



バカだ どうしてナマエの言葉にこんなに喜んでるんだ自分は



≪顔を出さなくて、悪かったな≫

「うーうん でも心配してたよ。昨日、ジャズさんとのドライブから帰ってきたころから、元気、なさそうだったから」

≪・・・いや・・それは・・≫

「でも、ジャズさんってすごいのね」

≪え?≫

「身体がサイドスワイプより小さいからなのかな、小回りも小さな動きも凄く速くて、あんまり揺れなくて、とっても快適なドライブだったよー」

≪・・・・≫

「また行こうな、って誘われちゃったんだけど、どうしてー……、ってサイドスワイプー?」



前言撤回だ


やはりだ、ナマエとジャズが一緒に居るところを想像すると凄く腹立たしい

ブレインが焼きつきそうにチリチリと火花を散らしてるみたいだ

許せない。今この瞬間はディセプティコンと同じくらいにジャズが憎たらしく思えてきた




焼け焦げそうになっているブレインに、一本の通信が入る



 ――― 受けてたってやるが、どうする?



 ――― 上等だ