人間って、すっごくうるさい
「ねぇねぇラチェット!ずっとこんな洞窟ん中に居たら気分滅入っちゃうわよ!たまには外にドライブしに行こうよ!」
≪断る。滅入っとらん≫
「えーどうして?ミコとラフはドライブに出かけたのよ?ジャックはアーシーに乗って一緒にバイトに行っちゃったし…」
≪ならお前も"バイト"とやらに行けば良いじゃないか≫
「私はやってないもの!それにどうせバイトするなら、ラチェット先生のお手伝いの方がしたい!」
≪助手は取らない主義でな。帰ってもらおう≫
「門前払いとか酷いよー!」
なんでこんなに煩いの人間って
いや、まだジャックやラフはこれ程ではない
―ナマエとミコ、女子組だ。女子組は本当に煩い
ミコはミコで、音楽機器を持ち込み私からしたら"がなってる"としか思えないような不協和音をガンガンに鳴らし響かせ騒ぎ立てる。まぁ、まだ、いい
私がその音をシャットダウンしていればそれ程気にはならない。それに大概バルクヘッドやバンブルビーがミコに付き合ってやっているから
しかし、ナマエは違う
ミコと決定的に違う点は、『私に話しかけて来る』ところだ
話しかけられてしまえばシャットダウンと同じ対処は取れない
曲がりなりにも話しかけてきている相手を無視する、と言う行為に慣れないのだ
今まで私に話しかけて来るのはオプティマスを初めとしたオートボットの同じ仲間達だ。皆の話を"無視"なんてしたことがない。したくなかったし、仲間達との会話は大切なコミュニケーションの手段の一つだったのだ
だがその対象がナマエになるとどうだろう
冒頭でも繰り広げられた会話を見て判別するとおり、ナマエが私にしてくる会話は、無駄話がとても多い
およそ無視しても支障はないし、付き合えば時間のロス、と判断しても良さそうな内容ばかりなのだ
無視して作業を進めろ、とブレインコンピューターはそう計算を出してくれているのだが、どうにも、無視、ううん……出来かねないでいる
「連れないよラチェットー私もパートナーと一緒にドライブとかしたーい」
≪誰と誰がパートナーだって?≫
「私と、ラチェット!」
≪お前と私は所謂『知り合い以上友達未満な関係』ではないかな≫
「…それって前に私が教えた言葉じゃない!」
≪便利そうだったからな 覚えてみた≫
「それを私に向けて使うのってどう言うことなのよ……あれ?」
って言うかちゃっかり私との会話の内容覚えてくれてるんだ!と叫ばれた
どんくさい癖にどうしてそう妙な所で鋭いのか
あぁ、ナマエの相手をしたせいで予定していた時間を大幅に過ぎてしまったではないか!
ああもう本当に邪魔!この娘邪魔!
「あ、そうだラチェット聞いてくれない?」
≪聞かない≫
「この前ね、同じクラスのジェームズが『どうしてあんなジャックみたいな野郎と最近つるんでるんだ?あんな奴より僕と付き合わない?』とか言ってきたのよ?バカじゃないの?アンタよりジャックの方が数倍いい男よ!って言ってやったの。そしたらアイツ、ポカン顔しちゃってさー」
≪………はいはい…≫
「あっでも安心してラチェット!私、ジャックのこと恋愛対象として見てないからね?今は恋人作るよりラチェットの真のパートナーになるのに夢中でそんな時間ないもの!」
恋人早く作ったらどうだ!!とは叫ばなかった
どうせまた直ぐにナマエは反論してくるだろうから
これ以上会話が拡がってしまうのは面倒くさい
まぁ、私が拡げなくとも彼女の手にかかれば会話の内容は海のようにどんどん大きく広がっていくのだった(最終的にナマエの好みのタイプはハリウッド映画に出てくるような渋いけどどこかお茶目でユーモラスなオジサマ、と言う内容で落ち着いた)
好みのタイプはお前だよ早く気付け