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君となら約束も果たせるだろう







私の恋人を簡単に例えるなら――『英雄』
レッカーズで彼が培ってきた力が、いつしか両軍共にその名を轟かせる程の戦士になりました

レッカーズで一緒に居た頃から彼は強く、バルクヘッド達と一緒に手合わせをし、悉く打ち負かしていました
そんな彼の姿を見て、私は幸せになれます。荒く、粗野な性格である彼――ホイルジャックと、どちらかと言えば生真面目な私とではつり合わないと注意された事もあります
今もつり合いが取れているとは思いませんが、
ぶっきら棒なりに私のことを護ってくれる彼を、私も護ってあげたいとは思うのです





≪ナマエ 何を呆けている≫



隣から掛かって来た声は少し苛立ちを含んでいた。ごめんなさい、と謝り、前に向き直る。相変わらずの宇宙空間が拡がってます

ホイルジャックが忙しなくコンソールを叩く音と、スターハンマーの駆動音が聞こえる。長く彼と共に宇宙を旅しているけれど、この無音空間を徐行するのは最初はキツかった。セイバートロン星が常に喧騒に包まれていたから尚更。それに、私もホイルジャックも、それ程お喋りな方ではありません。だからより一層、静寂に拍車をかけているような気もします



≪…何をそんな一心に見つめているんだ?≫



余りにも私がぼぅっと何もない宇宙空間を凝視していたからでしょうか、怪訝に思った彼が私の方に身を乗り出しながら、前方に目を凝らしています



≪いいえ、すみません。異常はありません。少しぼうっとしてしまっていたの。貴方に誤解を与えてしまい、申し訳ありません≫

≪……その短い言葉の中で2回謝ったな。謝る程のことでもないだろう≫

≪…ごめんなさい≫

≪…ほら、まただ。まったく≫



仮にも恋人に対してなんて言い方、と思う方もいらっしゃるでしょう。ですが、これが私たちの"普通"なのです。ホイルジャックが私のことを好きと言ってくれた時に、恋人に対する"不満"なんて言う物ははじけ飛んでしまったのです。ホイルジャックが私の傍に居てくれればいい、ずっと私だけを唯一貴方の傍にいれる存在にしてほしい。だから、



≪…何か不安なのか?≫

≪……えぇ?≫

≪………≫



彼からかけられた声に対して気の抜けた返事をしてしまい、彼の目があぁん?と言いたそうです



≪…お前な。俺が折角、………あー…なんだ、その……≫

≪心配してくれたんですよね?ありがとう、ホイルジャック≫

≪…………フン≫



ちゃんと前方に集中しろよ、と言ってホイルジャックはまた私から目を逸らした

それが何だか、



≪……ホイルジャック≫

≪何だ≫

≪さびしいです≫

≪は?≫

≪私は、これからも貴方の傍にいてもいいんですか?≫

≪急に、どうしたんだ、ナマエ≫

≪……ごめんなさい、聞かなかったことにして≫



あぁ恥ずかしい、

こんな事言うの、私の性分じゃないのに、
また彼を困らせてしまうじゃない、



≪ナマエ≫

≪はい≫

≪こっちを向け≫

≪……≫


肩を掴まれ、ゆっくりと彼の方に向き直る。
難しい顔をしていたけれど、私と目が会うと、ホイルジャックにしては珍しく、小さく口元を緩めた



≪俺はナマエが好きだ≫

≪…はい≫


≪今まで他人を自分の傍に置いておく、と言うのが無かったから上手く言えんが、お前が共に居ると、気が緩む≫

≪…いいことです、か?≫

≪張り詰め過ぎていても疲れるだろう。いいんだ≫

≪……はい≫


≪…まぁ、後は、そうだな≫

≪…?≫

≪………お前は、俺が傍にいることをこれからも許すか?≫

≪も、勿論です!許すだなんて…、私は…これからもずっと…、≫

≪ そうか。 なら俺は、お前が望む限り、≫




 ――― 永遠に共にいる。






≪…………≫




戦闘中でもないのに、
わざわざバトルマスクをオンにして私から顔を背けたホイルジャック。
私が不安がってたから、言いなれないそんな事、言ってくれたんですよね?
…粗野で、口が荒くて、冷静で、でも優しい、
貴方のそう言うとこ、わたし大好きです。


彼ほど口に出す事が叶わなかったから、
レバーを握ったままの彼の手に、私の手を重ねた




≪………では、一生、一緒ですね≫

≪…そうか。 ならば、この身体が錆びつき、スパークの灯火が消え行くまで、俺とお前は一緒だ≫

≪はい!≫





あぁ、ホイルジャック
 次の惑星が見えてきましたよ
  青く、美しい、星ですね