学校帰りに久しぶりにサイバトロン基地へ立ち寄ったら、見慣れない女の人とアイちゃんが楽しそうにお喋りしてた。髪の長い綺麗な人だ。一体誰なんだろう?
『あら、ユウキ君!いらっしゃ〜い』
「あら…」
「あ、こ、こんにちは!」
アイちゃんに挨拶をする前に、女の人と目が合ってしまって慌てて挨拶をしてしまった。恥ずかしい
でも女の人は一瞬キョトンとしたけど、すぐにとても綺麗な笑顔を浮かべてくれた
「こんにちは。貴方がユウキ君ね?」
「はっ、はい!」
「あの人から話は聞いてたの。私はナマエって言います、よろしくね?」
「こ、こちら、こそっ」
あの人?誰だろう。アイちゃんに後で聞いてみようかな。あ、でも失礼かも…
『フフッ!ユウキ君、ナマエさんがどんな人なのか気になってるみたいね〜』
「そうなの?」
「ちょ、ちょっとアイちゃん!」
何で言っちゃうのさ!恨みがましい視線を送ったけどアイちゃんは何処吹く風だ。こういう時女の子ってすごく強い
「ご、ごめんなさい!」
「いいのよユウキ君。 私はね、ずっと前にあの人に…ファイヤーコンボイに命を救ってもらったの」
「命を?」
「ええ。 私の住んでたマンションが放火魔に襲われて…火の手に塞がれて逃げられなかった時にあの人が消火活動をしながら私を助けに来てくれたの」
そう話すナマエさんの顔は昔を思い出して悲しんでるみたいな、ファイヤーコンボイの事かな?それを思い出して惚けているような感じだった
「…その話、知ってます。僕の家の近所のマンションだったんです」
「あら、そうなの?」
『ナマエさんとユウキ君は、知らなかったかもしれないけどご近所さんなのよ』
「そっかぁ… 小さかったから、僕あんまり覚えてないけど…真っ赤な火が空に届くぐらい燃えてたのは今も覚えてます」
「…そう…私も、凄く恐かったの。あれから少し火恐怖症みたいでね…」
「そうなんですか……あ、で、でも!ファイヤーコンボイが来てくれてよかったですね!」
「ええ 吃驚したの。もう駄目だ!って思った時にね、いきなりベランダの窓からあの人の腕が侵入してきて…宇宙人の侵略かと思っちゃって大変だったの」
愉快そうにクスクスと、ナマエは口に手を当てて上品そうに笑った。
こんなに綺麗な人が近所に住んでいるんだったら、何処かで擦れ違ったとしても絶対に忘れないだろうになぁ
「それであの人が私を外に連れ出してくれて…≪もう大丈夫だ≫って、力強く言ってくれてね?すっごく安心したわ〜」
「僕も…ファイヤーコンボイには何回も助けて貰ってます!」
「そう。ファイヤーコンボイって…私達のヒーローみたいだよね?」
「はい!」
会話の区切りが付いたタイミングを見計らっていたんじゃないか、というぐらいに絶妙な間でファイヤーコンボイが基地に帰ってきた。
途端に、ナマエさんの顔がパッと嬉しそうに花開いた
≪あれ、ナマエ 来てたのか≫
「はい。 ファイヤーコンボイ、お帰りなさい」
≪ああ…ただいま、ナマエ≫
あ、ファイヤーコンボイの顔が優しくなった
あれれ?この二人、もしかして…
『ユウキ君、この二人お似合いでしょ?』
「へっ!?」
アイちゃんが近くに寄って来て耳打ちした言葉に飛び上がる。やっぱりそうなんだ!
「う、うん!すっごくいいと思う!」
「?何がかな、ユウキ君」
「わぁっ!」
ナマエさんに尋ねられてまた飛び上がってしまった。ファイヤーコンボイが≪ユウキ君もいらっしゃい≫って言ってくれたけど、それどころじゃないよ!
「な、何でもないです!」
「そう?」
近くに来てくれていたナマエさんは、またファイヤーコンボイの許に戻って行った
ファイヤーコンボイは、とても自然な動作でナマエさんの身体を両手で救い上げて、
自分の左側の肩にそっと座らせた。目線はお互いを直視している。近距離すぎないだろうか
「ファイヤーコンボイ 今日もお勤めご苦労様でした。変事はありましたか?」
≪いや、今日はとても平和だった。夜に何かが起きない、とも限らないが… ナマエ、久しぶりに二人で何処かにドライブでもしに行かないかい?≫
「、もちろんですファイヤーコンボイ!わたし、貴方となら何処へだって行きますっ」
≪私もだ。君となら、何処でだって生きていける≫
「ファイヤーコンボイっ…!」
≪ナマエ…≫
子どものユウキ君には刺激が強いかもしれないから、向こうに行きましょうね〜とアイちゃんに急かされる前に見た光景は、とてもじゃないが恥ずかしくて見るに堪えれなかった。
その晩、アイちゃんから聞いた話だったが
ナマエさんとファイヤーコンボイが二人で時間を過ごしていたところにデストロンガーのお馬鹿カルテットが空気も読まずに殴りこみ、いつもの数倍の怪我を負ってファイヤーコンボイに返り討ちにされたらしい。
僕はその時初めてそのことを聞いたが、前からよくある出来事らしく、ナマエさんも慣れたものでにこやかにファイヤーコンボイの応援をしているのだと言う。何処の熟年夫婦なのか