きみのことが大好きすぎです
………
左目の包帯がようやく取れたと思ったら、開口一番キッドは「おっしゃ行くぞ」と声をかけた。恋人はすっかり置いてけぼりである。
「え、ちょ、何処へ行くつもりなん?」
「あ?何ボケたこと言ってんのナマエ 行くって行ったら海しかねぇだろ」
黒のファーコートを凛々しく羽織ったキッドの肩を掴む。思い切りジト目で睨まれたがここでめげてはいけない。
「いかんでしょぉ! "アイツ"に斬り付けられた目だって今日やっと見えるようになったばかりだってのに!!」
「うっさいナマエ 耳元で叫ばないで」
「今日治ったばっかりなのに……」
「ボソボソ喋んな鬱陶しい」
鋼鉄の拳骨で殴られる。キッドはナマエが何を言いたがっているのかを察しているから余計に気を悪くさせていた。
要するにナマエは、「だから言ったのに」と言いたいのだ。
キッドが船長としてユースタス海賊団を率いて海に出た最初の時
今まで戦いと無縁の人生を送って来ていたがそれでもたった一人の大切な女の子を見捨ててはおけなかったナマエがキッドについて来て、苦言のように言った言葉が「女の子なんだからあまり無茶をしないで」だった。
ユースタス・キッドと言う少女を"女"扱いして来るのは、ずっとナマエだけ。どんなにキッドが嫌がってもナマエはそれを辞めなかった。
キッドは女の子なんだから、あまり無茶をしないでほしい
出来ればどこにも怪我をしてほしくない
顔に、だなんてもっての他
「………失明したわけじゃねぇ 傷口だって、すぐに塞がって肌と一緒になっちまうって」
「でもさ……」
――キッドの顔に、傷が
ああもう、本当に ナマエはうるさい。それに心配性だし、お節介焼きだし、人が良すぎで、ほんと アタシに似合わない男
「…バッカねぇ いつまでも"負ってしまったアタシの傷"のことばっか言わないでよ」
「キッド…」
「そこは、アンタがアタシに傷を負わせてしまわないぐらい強い男になってみせる、ぐらい言って見せなさい このバカちん」
ようやくナマエはゆるりと笑って頷いた。
昔から、キッドの
大好きな ことでしか見せないナマエの笑顔だ
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