不仲だったわけじゃないが、この守護霊――ナマエと上手く付き合えていたかは答えに窮するところがあった。 ウソップの守護霊はとにかくよく歌を歌う奴で、民族調のものから大衆受けのする曲、男声女声混声、明るい曲調陰鬱とした曲調関係なく歌っている。 ウソップが知らないような曲ばかりナマエは口にする。どこから曲のレパートリーを仕入れてくるんだろうと疑問に思えば、なんと自作曲も混じっているとのこと。実はこの守護霊、作曲家として売り出せば大成するんじゃないだろうか。 しかしナマエは、あまり会話をしない。口はいつも開いているがそこから出てくるのは専ら歌だ。言葉じゃない。ウソップが話を振っても、ナマエは歌うばっかりで答えない。でも顔はニコニコとしている。なにがそんなに楽しいんだろう?ナマエはおれのこと好きなんかな。 「ナマエってどうしておれの守護霊なんかやってんだ?」 ――― 。 ナマエの歌が止まった。それに驚く。声が止んだことなんて初めてじゃないか? 気を悪くさせる質問だったのかも知れない。ウソップは昔から人に嘘ばかり吐いて回っていたばっかりで、誰かの顔色を省みるような言動はして来なかったから、この守護霊にもそんな態度を取ったんじゃ、と焦る。 だが守護霊は、ウソップの懸念とは裏腹に笑顔を浮かべていた。 そしてよく通る女声とも男声とも取れない、中性的な声で言う。 『 好き 』 ただ一言だけ伝えて、ナマエはまた歌を歌い始めた。 『好き』 それは、ウソップのことが好きだから守護霊をやっていると言うことなのか?よく分からない理屈だった。でもウソップは心地好い充足感に包まれている。 ナマエはずっと昔からウソップの傍にいた。嘘吐き者の嫌われ者ウソップに最初から付き合ってくれていたのはナマエだけなのだ。 今さらどうこうするような関係でもないが、今日は一つ、ナマエのことが知れたような気分だった。 ウソップに対しナマエが『好き』と伝えてから少し、ナマエの声色が半音上がったような気がしたからだ。 心地好い音をバックに、ウソップは海を見渡せる木の上で昼寝をする。 「イイ日だな〜」 ――本当に |