暗い企画 | ナノ
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ハートの海賊団に入船したジャンバールは、海での生活が楽しくて仕方が無いようだった。

おれはキャプテンたちオークション視察組に参加してはなかったから、キャプテンとジャンバールの出会いの様子を知らないけど、キャプテンもジャンバールを気にかけているようだったし、ジャンバールの方も拾ってもらったって言う恩義があるのか懐かしい海賊生活に甘えることなく頑張っているように思った。


それに、ジャンバールがハートの船に乗ってからかれこれ一年が経つ。


あれから一時、世間を賑わせた麦わらの一味たちのニュースが全海に流れたことも少し懐かしい部類に入り、おれ達も今はキャプテンの計画の為に海賊たちの心臓を集めているところだった。

最近は特に大きな事件も出来事もなくて、新聞に載る記事も薄い内容のものが多い。
今日もカモメから新聞を受け取って、先にザっと目を通す。急いでキャプテンに伝えなくてはならないようなことは何も書かれていな………「ん!?」






「おおおおおおおいジャンバールー!!!」

「どうした騒々しいな」

「おまおまおまおまおま!こ、この記事読め!!お、お前の名前出てんぞ!?」

「なに…?」


おれから新聞を受け取ったジャンバールがその記事に目を通した途端、ギョッと目をひん剥いた。強面な顔が、さらに強張ったような気がした。
「…これは…」声を漏らすように呟いたジャンバールもどう言うことなのか分かってないらしい。


そこに書かれていたのは、天竜人が麦わら海賊団の消息を追わせる為に海軍の戦力を多大に割かせていると言う内容と――これは以前からそうだった。噂だと黄猿大将や、パシフィスタなどが投入されてるらしい――
それとは別にもう一つ、新しい"天竜人"が誕生したと言う記事だった。

そしてもう少し読み進めると、途中にジャンバールの名前が登場する。
広い意味で捉えれば、それはハートの海賊団全体を指していた


「………ナマエ…」


ジャンバールが女の子の名前を呟いた。誰だ?とは思ったが、聞き返せそうな雰囲気じゃあない。しかし後になって気付いたことだったけど、その名前は、新聞に書かれていた新しい天竜人の洗礼前の名前だったんだ。



「『ジャンバールをとって行った海賊たちを許さない。見つけて取り返す』……」


「その新しい天竜人の女の子と、知り合いなのか?ジャンバール」


おれとジャンバールの騒ぎに気付いた他のみんなが「どうした?」と駆け寄ってくる。

ジャンバールが青褪めた顔をしているから、余計に注目を浴びていた。



「……やめてくれ、ナマエ……」



――ジャンバールを取り返す



文面からは何の温度も感じない。が、ジャンバールの目には、その文字が赤く滲んで見えているのかも知れない。天竜人に狙われるなんて、大問題に繋がる。ジャンバールの心境では葛藤が繰り返されてるんだろう。新聞を持つ手を震わせながら、低く呟く



「……もう、おれの事なんて忘れてくれ…!」


このままでは、自分がいるせいで、優しいハートの海賊団の面々に迷惑がかかる。

もしそうなってしまえば、


「おれは今以上に、お前を憎まなければならなくなる」


それだけはしたくない。 したくないんだよ、ナマエ