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▼ 精神的な自立?


今の俺の心境は母親のそれだ。

街の中心部にある大型ショッピングデパートの入り口である自動ドアの前で右に左にウロウロうろうろ 買い物客の皆さんから不審な目で見られ、警備員のおっちゃんが無線で何かを話してる姿も見えるが大丈夫です安心してください不審者じゃないんです俺は。ただ友人が出てくるのを待ってるだけなんです



「………ナマエ」
「帰って来たー!!  おいどうだったんだミホーク! 面接のほどは!」



そう、今日は何とミホークの面接の日だったのだ。 先日、このままじゃ絶対にあかん ミホークの為にならねぇ といきり立った俺が勝手に応募して勝手に電話して勝手に連絡を取り付けたショッピングデパートの面接にミホークを向かわせた。
明日が面接であることを伝えたときのミホークの顔と言ったら筆舌に尽くしがたい。例えるならムンクのような顔で言葉を失い、表情で嫌だと伝えて来ていたが俺はそれでも心を鬼にして無視した。

面倒だ、行きたくないと拗ねたミホークに「お前の為を思ってやってやったんだぞ!!」と声高々に言えば、渋々、本当に渋々頷いて行く気力を出してくれた。

長らく箪笥のコヤシと化していたスーツを着込み、髪も髭も整えたミホークはマジでカッコイイんだ。客のお姉さんやおばあさん達が立ち止まって見惚れているぐらいなのに、今は面接の疲れが出たのか顔がどんよりとしている。



「それで?結果は?合否はいつ出るんだ?」



髪についたワックスのべたつきを気にしていたミホークは、「それなんだが」と前置きをした上で出てきた時に手に持っていた茶封筒を俺に渡して来た。



「なんだそれ」
「"契約書"と"社員カード"、"新人テキスト"とやらが入っているらしい」
「受かってんじゃねーか!!!」



おおおい!? 面接当日に受かるってどんだけだよ! 吠えた俺に対してミホークは「知らん」と一言答えただけ。まじかよと思いながら中の書類を確認してみれば確かに此処のデパートの名前が隅に入った書類が何枚も入っていた。マジで受かったらしい。信じられない。いや、勝手にやって送り出しといてこんな事言うのもなんだがまさかミホークがこんな簡単にとんとん拍子で仕事を手に入れるなど思ってなかった。

一体どんな受け答えして気に入られたんだ? そう言えばミホークは「女性の面接官だった」あーね、なるほどな、何となく察せましたー



「…まあとにかくよ、ちゃんと仕事ゲット出来たんだから頑張って働くんだぞミホーク」
「………ナマエが勝手に応募したくせに…」
「ぐ…い、いや言い訳みたいだけどまさか本当にお前が受かるなんて思ってなかったんだよ」



どうせ面接態度が悪い、って理由とかで落とされるだろうからやっぱり面接の練習をさせるべきかなーって思ってたのがついさっきの事だったのに。 いや待てよ。これは本当に現実に起こった出来事なのか?よもや俺の夢の中のこと、なんてオチじゃないか。試しにミホークの手を取って俺の頬を小突いてみる。…まあまあ痛いから、多分現実だ。「なんだ?」俺の行動の意味が分からないミホークの手を本人に返して、全身をずらーっと見てみる。嫌味なくらいにスーツが似合っていて、普段の髭もじゃもじゃ髪ボサボサ服よれよれのミホークは今ここにはいない。



「………努力はしてみよう」
「ほう、例えばどう言った」
「…朝は、ちゃんと起きるとか」
「………おう、がんばれ」


…やっぱり無理な気がしてきた。
ミホークが? 朝に? ちゃんと起きる?  …ありえねー。目覚まし時計を手刀だけで真っ二つしてしまうような奴なんだぞこいつは。さすが前世が元七武海…とか言ってる場合じゃねえ。これはもう自ら「努力してみる」と言ったミホークを信じるしかない。俺がずっと友人関係を続けてきたに相応しい男だ。きっとやってくれる。と信じてる



「…ナマエと一緒に住めたら、頑張る」


「………お前なぁ」
「不束者だが、面倒を看てくれ」
「ふざけんな 不束じゃない者になってから出直せ。そしたら嫁にでもペットにでも迎えてやっから」
「!」



そこ、そんなに顔を煌かせるな。 可愛いとか思ったじゃねーかバカ俺死ね