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▼ 午睡による愛撫


普通はな、恋人がくれる"噛み痕"ってもっとこう、淫靡と言うか、情事のかほりを思わせるような、そう言うアレなモノだろ。 ああ今サラリと恋人と言ってはみたが噛み痕をくれたのは恋人ではない。腐りすぎて逆に硬度が増した感じの縁を持つ幼馴染の恐竜がつけたもので、正直とっても痛い。



「今、相手がおれで良かったと心の底から思ってるだろドレーク」

「……ああ、その通りだ」

「いつぶりだろうな、お前が寝惚けたのって」

「……分からない。年単位であるのは間違いないが…」

「あーあーあー!イッテェなおいオイドレークさんよぉ!!!」

「す、すまんと謝ってるだろう!!」



すやすやと昼寝をしていたところを隣で同じく寝てた恐竜に頭からバックリと行かれました!!ああ首が口内に入ったとも!息苦しさで目が覚めて一番最初に目に入ったのがドレークの唾液だ!粘着質さに驚いて「うおっ!?」って思わず叫んじまったけどその声さえもくぐもってたわ!そらそうだ、だって俺の顔はドレークの口ん中にあったからな!!

ドレークはたまに、ほんっとーうにたまに、それこそさっきも言ったように年単位で"寝惚ける"ことがある。これがまた性質の悪い寝惚け方で、夢遊病とか、寝相がだらしないとか、頭がぼんやりしてしまうとかそう言う次元ではない。寝惚けたまま悪魔の実の能力を使い、恐竜化してしまうんだ。寝惚け方がワイド過ぎるんだこいつは昔から。

被害を被るのはもっぱら俺だ。と言うか俺だけだ。今日だってものの見事に行かれた。ご丁寧に大きなお口でパックリと頭からだ。ドレークの牙が俺の首辺りに噛み付いていたような痕が出来た。くっきりと、前後から挟むような凹った痕だ。そのまま噛み千切らなかったのがドレークの凄いところで、たとえ寝惚けていても不用意に噛み砕いたりはしない。その注意をもっと他に活かさないといけないだろうがと言ってやりたいが、それよりも今は尋問が最優先事項だ。俺の問い詰めはまだ終わってないぞドレーク!大人しく正座してればじきに許されるとか甘いこと考えるなよ!!



「そろそろ寝惚けたお前に殺されるんじゃねぇかと俺は思っている」

「それは絶対にしない」

「とお前は言うが、寝惚けてたら人間なにをやらかすか予測できないだろ」

「…だとしても、ナマエだけは絶対に殺さない」

「お前の武器はな、凶器だ。 前にも一度あったな。息苦しさで目が覚めたら腹にお前の尻尾が巻きついていた奴だ。アナコンダでも出たのかと思ったぞ」

「……懐かしい話だな。海軍にいた頃の話じゃないか」

「反省をしろ。あれからお前のその悪い癖が治ってないってことだろうが!」

「………弁解のしようがない。日々鍛錬をしているのだが、どうも……」

「…」



ドレークが毎日自分を鍛えているのはもちろん分かっている。能力者として力に慢心しまいと努力する姿勢を俺は知っている。だからこそ、ドレークのその言い分には俺だって口を閉ざしてしまうだろう。
寝ている間は、どんな人間だって無防備になるものだ。
四六時中神経を張り詰めさせているドレークにも、一日ぐらい心安らかに眠れる日を作るべきだな、と俺が決めてからかれこれ十何年になるが、そのたまの一日ごとに寝惚けたドレークに噛まれたり締められたりする身のことも少しは考えてもらいたい。が、まあ、言うべき程のことでもない。そろそろこの辺りで手を打ってやることにしよう。


「……次回からは気をつけるように」

「ああ…分かった」


いつもの"軽い"注意で締めくくろう。
どうせまた今度同じことがあったとしても、ドレークは言うように俺を殺したりしない。たぶん寝惚けて噛み付いて来てるのだって、あれはドレークなりの"甘え方"じゃないかと俺は思っている。多分間違った見方じゃない筈だ。



「よし、寝なおすぞドレーク」

「…ナマエ 今度の島で5冊余分に本を買ってもいい」

「それは有り難い話だ。 よし寝ろ。とりあえずドレークは寝ろ。寝て疲れをしっかり取れ。いいな」

「分かっている。 …ありがとう、ナマエ」

「よせ礼なんて。キモイぞ」

「…うるさいな」



そう言うとドレークはすぐに寝息を立て始めた。相変わらず、この日だけはいつも寝付きが良い奴だ。と言うわけで俺も読書を再開しようと思う。

読みかけて中断していた本を開こうとすると、
その表紙にべっとりとドレークが恐竜化した時についた涎がついていて、目覚めたドレークに俺が再度こっ酷くお叱りを与えることになるのは数時間後の話になる。