30万企画小説 | ナノ
×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -


▼ 世界でただひとりだけのかわいくない馬鹿者


美しき海賊団の朝の始まりは、船長が届いた新聞を2つに破くところから始まる。そして散らばるソレらをモップで掃く。ここまでがワンパックだ



「ど、う、し、て…!今日も新聞の大一面を飾るのがぼくではないン、だー!!!」






はい、おはようございます皆の衆。「だ」のところで勢いよく新聞を破り捨て今日も元気よく叫ばれていらっしゃる船長のご機嫌を取る係りを決めたいと思いま…え、また俺の役目になるの?勘弁してくれよみんなさァ。幾ら俺がおべっか使いの太鼓持ち人間だからってそんな毎日まいにち船長のご機嫌取りばっかやってらんねぇんだよ分かる?俺がこの美しき海賊団……て言うか今さらだけどなんだこのネーミングセンスは……に入ってもう結構経つ先輩格だって分かってその所業?は、ナマエさんが適任だからですってあのなー、若い奴らは何事も勉強せんといかんのだぞ?面倒くさい船長のご機嫌取りだってまた勉強だぞ?海賊の道が厳しいってのをちゃんと体に教え込まないとダメなんだぜ?俺の背中を見て学んだってダメ。そんなのちゃんと勉強してる内に入らないからな。……え、違う?面倒くさいからじゃなくって船長の色香に当てられてマトモに目も合わせられないから?ばっか野郎ばっかか。目ん玉かっぽじってよく見てみろ。たとえイケメンだろうとな、船長は男だ男。港町の踊り子姉ちゃんじゃねぇんだ。よく言うだろ、美人は3日で飽きるって。いつまでも目を逸らしてばっかだったらずっと慣れねぇんだよあの人に。俺を見てみ?あの人の色香なんざもう何年も前に克服した結果が――



「ナマエ! ナマエ!! あああもうっ!どこにいるんだナマエ!!」


「はいはいはい船長ただいま〜! あ〜船長ってば今日もまた一段とお美しくあられますねぇ!」

「フン!そんな分かりきったことをいちいち大声出して褒め称えなくても良いんだよ!」



――このザマなんだよ




「おいナマエ!いつになれば新聞社からの返報が来るんだ!先週出した筈なのにまだ来ないじゃないか!」

「そのようですねぇ。もしかして新聞社側の人間がキャベンディッシュ様が書かれた薔薇のように優雅な文字遣いに見惚れて手紙をまだ凝視しているのかも知れませんよ〜」

「む……そうか、その可能性もあったな確かに。フフ…仕様のない者達もいるのだな」



全く何を仰っているのか分からないが先週末にこの船長サマが『新聞の一面にぼくのブロマイドを掲載しろ、と新聞社に抗議の手紙を送れ』と本当にワケの分からないことを言い出したことがあったんだよ。もうな、意味が分からないのだと。新聞の一面ってのはその時々に起こった事件やニュース等を人々の目に留める為に使用するものであって一個人の海賊船長のブロマイドなんか載っけて何になるのかと。ああ、もちろんそんな抗議の手紙なんて送ってないが?送るわけないだろう。船長はやけに真剣に夜通し手紙に綴る文を認めていらしたようだが残念ながら没収して俺の部屋の棚の奥深くに仕舞ってある。なので新聞社からの返報は、一生返って来ないからな。



「焦らずに待てば良いのです。船長は見た目もさることながら剣術の腕前も航海技術もまたピカイチ 待っていれば自ずと時代の方から船長に追いついて来る筈ですから」

「も、もっと言ってくれナマエ!」

「いやほんともう船長ってばお美しい。金糸の髪が朝陽を浴びてまるで天使のように見えますって言うかもしかしてキャベンディッシュ様って天使なのでは?」

「そ、そうだとも!ぼくは天使でさえ裸足で逃げ出すくらいの女神だからな!」




何言ってんだかこの人は。女神じゃないだろう。あえて言うなら男神だ。


一頻り船長が満足行くまでおべっか使って話を右から左に受け流しつつ、マストの裏側から此方を見てくる下っ端たちに視線を送る。いいか、海賊ってのはこう言う風にして上下関係を成り立たせるもんなんだぞ。 俺からの目線メッセージに気付いた空気の読める下っ端達は凄い勢いで頷きながら「ナマエさん、かっけぇー…!」なんて言ってくれる。はははすみませんなぁ船長。ナマエは着々と下っ端たちからの尊敬ポイントを集めて行ってますよははは。



「フ…所詮、海を賑わせていると言っても、今の新星たちはどれも小粒程度の者達ばかり……いずれこのキャベンディッシュとデュランダルが、再び新世界の海の頂点を担う日が来るのもそう遠からぬ話だな…!」

「ええまったく」

「ナマエもそう思うか!!」

「はいキャベンディッシュ様とデュランダルならそれもまた簡単なことであるかとー」

「はははは!止してくれよナマエ!あまり褒められるとこのキャベンディッシュと言えど頬を掻いてしまうな!」




あー、はいはい。船長がまた天下を獲ってくださるんなら、俺たちクルー一同、とーっても喜ばしいことであるのは確かなんで頑張って頂きたいですねー。