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▼ ひたいあわせ


たかが昼寝じゃないか。そう思っていたのはどうやらナマエだけだったらしい。
横になっているというのに"直立不動"と言う姿勢のまま、モモンガは大変寝苦しそうにしていた。お前、横になって寝たことないのか?と言ってしまいそうになった。いやいっそ言ってやってしまっても良かったのかも知れない。「おい、おいモモンガ」眼を開けろ。揺すればモモンガは「…なんだ? 何か間違ったか?」と見た目に反した天然ぶりをこれでもかと炸裂させる。ああ、間違っている。大間違いだバカ野郎め


「昼寝とはもっと体安らかにリラックスした状態で行うものだぞ。お前のそれは何だ。金縛りにでもあったのかと言いたくなる。なぜそんなに足先を揃える必要があるのか言ってみろ」

「…だらしなく崩せばいざと言う時に反応が遅れるやも知れん」

「非番の時なんだから"いざ"なんて考えなくてもいいんだよ! 崩せ!もっとだらけきった体勢になれ!」

「むっ!?バ、バカ者!どこを触っているんだ!」



ぎゃーぎゃー。のどかな海軍居住区の一軒家の縁側に、騒がしい取っ組み合いをする声が響く。おかしい。恋人を家に招いて二人っきりになっている筈なのに、この甘さの欠片もない展開はどう言うことなんだ。
真っ赤な顔でナマエの手を自身の足からのけようとしているモモンガの姿を組み敷くような格好のまま見下ろすのは気分がいいが、違う、こう言うんじゃない。求めてるのは、これではない。


「休暇の有効利用もままならんとかヤバイぞモモンガ!!」

「今までに休暇を必要として来なかったのだ!し、仕方ないだろう」

「いーからつべこべ言わず俺の隣に"自然な格好で"寝転べってば!」


そして今度は足ではなく腕を真っ直ぐにさせたモモンガの頭を強くはたいた。だから何でそうなるんだよ!

一応、モモンガも努力してくれているのは分かる。ナマエの言い分に合わせて動いてくれてはいるのだ。それが良くない結果にばかり終わってしまうだけで。

いい加減じれったくなって来た。「あああもう!」「な―!?」ナマエは足でモモンガの腰を挟み込み、そのままゴロンと横向きに倒れこんだ。壊れたラジオのように「な、なななな」と"な"だけを繰り返すモモンガの間近にある顔に額を寄せる


「こう! こうして横んなんだよ!」

「こ、こう…!? そ、そも、腰を挟まれなければならない理由はなんだ!」

「こうした方が密着出来んだろうが!」


密着!?昼寝をするのに密着するべき要素も利点もないではないか! だーもう喧しい!黙って大人しくしてろ!


結局、二人のたまの休日は、騒ぎあっている内にどんどんと過ぎて行ってしまった。










「分かるかオニグモ……モモンガがこの体勢で昼寝をするようになった理由が」

「……ああ くだらん惚気話だったが最後まで真面目に聞いたのを褒めて貰いてぇぐらいだよ」



海軍本部の一画 海兵たちの仮眠室となっている部屋の御座の上で、あぐらを掻いて座るナマエの隣で、しな垂れかかるようにして眠っているモモンガの姿がある。
立ったままコーヒーの缶を傾けているオニグモと違い、ナマエは仮眠室に入ってから満足に身動ぎも出来ていない。
腰に回された腕の強さを、20年前の自分にも味あわせてやりたいとナマエは思った。