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▼ 嵐の前の静けさ


闘技場予選Bグループの戦いは終わりを告げた。エリザベロー二世の放った攻撃により、勝ち残った一名を覗いて多くの者達が負傷 次々に担架に乗せられ救護室へと運ばれて行く怪我人の群れを見送りながら、ナマエはある一人の男の元へタイミングを見計らってから駆け寄った。「うう……」と痛みに悶え息を絶え絶えにさせている男に声をかける。「ベラミー」男――ベラミーの顔がハッと強張った。「な…ナマエさ、!」切れた口の端から血が滲み出している。出発しようとしていたところを引き止められうろたえていた医療班に「この男は後で俺が連れて行くから、他の怪我人を運んでやってくれ」ベラミーだって大怪我者だ。残して行くのは…と逡巡していた医療班だったが、ナマエの強い眼差しに気圧されて別の者のところへ向かった。

起き上がろうとするベラミーを制し、まずは労いの言葉をかける


「大丈夫か?」


ナマエからのその何でもない言葉にさえ、ベラミーは答えられない。恥ずかしかったのだ。


ナマエはドンキホーテファミリーで暗躍する密偵だ。諜報活動や暗殺を生業とした任務をドフラミンゴから任されることが多く、彼のお気に入りの人材でもあった。そして何よりも、ベラミーがドンキホーテファミリーに加入した時から可愛がってもらってきた、言わば兄のような人

つまりベラミーからすれば、こんな無様な失態を見られたくない人と言うことだった。



「す、すみません…ナマエさん…」

「ん? 何を俺に謝ることがある?」

「…っ」


キョトンとした顔で、突き放された。

"謝る相手が違うぞ"若しくは"謝罪の言葉など価値はないぞ"と思われたのかも知れない。ベラミーは痛む体を折り曲げてでも土下座をしたくなった。

強くなっただのと自惚れて、麦わらにも多く失望をさせた。
力をつけたと過信して、実際はこの様だ



「……そう暗い顔をするなベラミー 別に俺は、お前を苛めに来たんじゃない」


マントに身を包んでいたナマエが、ゆっくりとベラミーの頬に手を伸ばす。「!」傷口をなぞるように撫でられ、体が痛みで強張った。
ナマエは依然として無表情のままだ。


「…この後、お前のところに幹部の一人が向かう手筈になっている」

「………か、幹部…!? ナマエさん、おれは、消されるのか?」

「それは俺の役目ではないから何とも言えない。 だがお前は、裏で働いていた俺が可愛がってきた唯一の表の人間だ。出来れば死んでほしくない」


そうか。 ナマエは、忠告をしに来てくれたのだ。ベラミーは思った。「用済みには、されないって…ことですか?」それにもナマエはどうだろうと答える。故意にはぐらかされている感じだ。


「…ちゃんとしていれば、殺されないさ」


どう言う意味なのだろう。助言か? 慰めの言葉か? ベラミーには計りかねた。


もっと話をしていたかったが、ナマエの「そろそろ医務室に運ぶ。今は傷を癒せ」の声に体が横抱きに持ち上げられる。


「!? ナマエさん、何し…!」

「ジッとしろ。落とすぞ」

「う…っ!」


闘技場にいた人間たちが、何だあれはと不躾な視線を送ってくるのが分かり、ベラミーはナマエの顔だけを見上げていることにした。…どちらにしても堪らない状況だ。いっそ落としてもらって自力で医務室に向かう方が良かったかも知れない