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「#幼馴染」のBL小説を読む
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▼ 合縁奇縁


妙な男を確保した

最初にソレを見つけて来たのがベポでなければ、キャプテンは見向きもしないで「元いた場所に棄て直して来い」と命じただろう。

ぐったり弛緩し切っているフードを被った男はベポの肩に担がれたままで意識を取り戻さない。時折『……せん……ぅ…』と妙なイントネーションの呟きが聞こえるが、まるで意味は分からない。 ベポは「お腹が減ってたらいけないと思って!」と拾って来てしまった旨を必死にキャプテンに説明しているし、それをブスっとした表情で聞いているキャプテンが頷くのもそろそろかも知れない。


「……おい ペンギン」
「はい」
「水でも分けてやれ」


フードの男にだ 「分かりました」水の入ったボトルを男の口元?と思わしき部分に持っていってやり、「おい、起きろ 水だ」傾けてやるが、男は目を覚まさない。いい加減ジレったくなったシャチが男に近付き、大声で「起きやがれー!!」と叫んだ。うるさい、とキャプテンから頭を叩かれている。



『……ぅ……?』

「あ、起きた」
「やった!」


キャプテンに頭を叩かれた甲斐があった! 拳を強く握り締めたシャチを視界に入れたフードの男は、ベポの背中を見て『…こ、此処は…』と心なしか声を震わせている。

「道端で倒れてたらしいぞ、お前」

腕組みをしたまま答えたキャプテンに、男は
『え゛!? 人間!?』と慌てたように動き出し、軽い身のこなしであっと言う間にベポの拘束を抜け出して地面に降り立った。

只者ではないような動きに気持ち身構える。 よく見ればフードの付いたマントを羽織ってはいるがこの男、身形が奇妙だ。裾の端から見えているのは恐らく着物だろう。ワノクニの住人がよく身につける衣服の一種だった筈だ。 それに今、自分たちを見て「人間!?」と驚いたのも変だ。キョロキョロと辺りに目をやっている男は困惑したような声で『いけねぇ…まァたやっちまったぞ……ナマエ船長に怒られっわな…』とぼやいた。


「お前、何モンだ」

『あ、アハハ…ヤだなァオニイサマ方 おいらは只の通行人です』

「そんな怪しいカッコした通行人がいんのかよ?」

『いえねぇ、そこには感謝しておりますけどおいらが倒れてたのにふかーい訳は、ゲブッ!?』

「!?」



突然背後から伸びた手によって襟元を締め上げられた男は蛙が潰れたような声を出した。

「なァにやってんだキツ!! テメェ、勝手に出歩いときながら迷惑かけてんじゃねぇぞゴラァ!」

黒いコートを肩にかけた男だ。 その男が、背中に大きな剣を背負っているのを目にしたキャプテンがゆっくりとした動きで鬼哭を構える。「…その男のツレか?」キャプテンの問いで漸く存在に気が付いたように振り返った男は、"キツ"と呼ばれた男を背に匿った


「どっかで見た顔だな 噂の"ルーキー"とやらにいなかったか?――いや、ああそうだ思い出した トラファルガー・ローだな、お前」
「………」
「このバカがお宅らに迷惑でもかけたりしたか?」


ボカン!と背後の男の頭を殴れば『痛いですぜせんちょお〜…』と涙混じりの声が上がる。

迷惑はまだかかってなかったな、ウン  顔色を窺いつつ答えたシャチを見て「そうか …ならよかった」じゃあこれで失礼する

無愛想な表情のまま、ぶっきら棒に言って帰ろうとするのを キャプテンが「おい」と引き止めた


「待て」
「……ルーキー殿が、俺にナニカ?」


振り返った顔の眉間には深い皺が寄せられている
よっぽどの実力者でなければ、"死の外科医トラファルガー・ロー"と知っているにも関わらずこの態度はしないだろう

この男は一体、何者なんだ?


「…お前、何処かで会ったことねぇか」


え?と声を漏らしたのはシャチだ。男は表情を一切変えずに「…いいや?気のせいだろう」そう言って、連れの男の首根っこを掴み、今度こそ振り向きもせず去って行った。


「…キャプテン あの男と会ったことあるんですか?」
「………昔に、そんな気がしただけだ」


気のせいだったかもな

キャプテンがドンキホーテファミリーに在籍していた頃のことだとすれば、おれ達には分からない。去って行く男の背中から視線を外したキャプテンは気持ちを切り替え「オークション会場にとっとと出発するぞ」と命令をかけた。








「相変わらず日中はどん臭くてボケボケしてるくせに独りでフラフラほっつき歩いてんじゃねぇぞキツ 今度こんな事があってみろ 置いて行かれたって文句は言わせねぇからな」
『申し訳ねぇですよ船長〜! もう絶対勝手に出歩いたりしませんからぁ』


フードからピョコンとはみ出した銀色の長い耳を垂れさせ落ち込む姿が真剣だったから許してやろう。
とにかく、補給目的で立ち寄っただけのシャボンディで、長居は無用だ
トラファルガー・ローとも出会ってしまったし、全く今日は良いことがない。向こうに己の顔を覚えられていなかったのは不幸中の幸いと言ったところか

また余計な好奇心で『そう言えば先ほどの童子は船長のお知り合いですかな?』と首を突っ込んできたキツの頚動脈に手をかける
「…この話は終いだ。いいな、キツ?」
『あ、あいぃ…!』



とっとと此処から離れよう。余計な面倒ごとに、これ以上巻き込まれないように