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▼ フレーズだけは愛をもつ


溜まった洗濯物を日光の下で乾かす為に浮上したハートの潜水艦 そのタイミングを見計らったかのように、新聞配達のカモメがひゅーんと飛び込み、ちょうど洗濯籠を抱えていたペンギンの手の中に落ちてきた。

「新聞きましたよー」
周りの者達に伝えつつ、自分が受け取ったから先に読も、と新聞を開いたペンギンの足元にヒラリと一枚の手配書が。
それを見たペンギンが「ぎょえー!?」と言う声を上げる。
そこに映っていたのが、ナマエだったからだ。








「………」


完全に隠し撮りだ。振り返ったところ、を撮られたようなアングルの、手配書の中のナマエも今ここにいるナマエと負けないくらい不機嫌そうだ。手配書を持ったナマエの手と、大きな身体がガクブルと震えているのが見ていられない。

遂にナマエも賞金首か! なんて褒めようにも、本人がそんなどころではないのだから宴も保留だ。色んなところから上がる「おれらのナマエが…」の声の輩も無視しよう。



「でもこれでハッキリしましたね、キャプテン」

「ああ、アレの原因はコレだな」

「間違いないっすよ」

「……………」



シャチやペンギン、ローが話すアレコレとは、今から3日程前に遡る。





船を休ませる為に民間の島のドックに立ち寄った際に、海軍からの襲撃を受けたのだ。
トラファルガー・ローの拿捕を目的とした奇襲かと思えば、そうではない。海兵達が狙っていたのは、誤魔化しようがないレベルで ナマエであった。
何故ならリーダー格の海軍将校がハートの海賊団に向けて言った開口一番が


「あの時の声の主を引き渡せ!」


だった。

そう、やけに見覚えのある連中だなと思えば、
以前、嵐に遭遇した後に襲撃をかけてきた海兵の一船団だったのだ。


「"面妖な声の持ち主め!"とか何とか言ってましたよね、ナマエのこと」

「しっかりナマエの声にヤられてたくせに、よくもまあでかい態度取れてたよな」

『すいません』

「何でナマエが謝んだ」

「そうだぞナマエ!悪いのはみんな海兵の奴らなんだからな」

「あいつら、ナマエを付け狙う目的で手配書発行とか突飛ぃてるよ…」



おれならゲロ吐きそう。ブルリと身体を震わせて怯えるペンギン 自分もそれを想像したのか、青い顔になったシャチ

そしてローは、スケッチブックを持ったまま手配書から目を離さないナマエの顎を引っ張った。
「!」つんのめったナマエの身体が、ローの身体に伸し掛かろうとする。なんとか直前で踏ん張った。


「おれはおれのモノを他人にやる気はないんでな」



「キャプテンかっこいー!!」隣できゃあきゃあと囃し立てるシャチ達の声と、口元は歪んで笑っているが、眼差しは真剣そのものなローを見て、ナマエはようやく暗かった表情を平常に直した。


嬉しかった。

死ぬつもりで海賊になったのに、幸せな気持ちばかりをこの人達から貰っている気がした。
ナマエは、彼らに何も返せる気がしない。それでも許されるのなら、



「…ありがとうございます」


「ナマエ……」

「俺はこのまま、ハートの海賊団にいたいです」




顔の赤いローが「…当然だ」と不遜に言い放った。海兵に狙われる対象が増えたところで何も影響はないし変わらないから、と。
たとえナマエがこのまま船を降りたいと言っても、放してやる気も毛頭ない。
ナマエがスケッチブックを必要としなくなるその日が来るのを 楽しみにしているのだ