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「#幼馴染」のBL小説を読む
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▼ X・ドレークの場合


X・ドレークは生真面目な男だ。
何事に対しても妥協を許さず、どんな些細な事に対しても油断しない、常に全ての局面に対応できるよう考えを巡らせ、終始周囲に気を張り巡らせている。そんな男である。
そんな船長のことを根を詰めすぎだと心配する船員も少なくないが、いつも周りを気にかけることが出来るそんなところを慕っていると言うこともあって、ドレーク本人に対し「休んでください」と積極的に言う者はいない。
ドレークも自分が無理をしているなと気付くことが出来るし、疲れていたら仮眠を取って休むぐらいのことはする。それだけで日頃のストレスや疲れが充分に取れているのかと言われれば、それは無いことだ。眠っていても少しの物音で目を覚ます。起き上がって武器を構えて音の正体を確認しないと気が休まらない。

そんな睡眠らしくない睡眠ばかりを繰り返しているX・ドレークが今、
新世界のとある島の砂浜で横になって寝息を立てているのだ。



「………、ぐぅ…」

『…すー…』



有事の際にしか変身しない恐竜の姿のまま、長い尻尾を丸めた状態でぐうぐうと眠っている。彼のトレードマークでもある紺の帽子はその傍らで眠っている――大地龍の雌であるナマエの頭の上に乗っかっていた。




どんなクルー達でも言い出せなかったドレークへの「しっかり睡眠を取れ」と言う言葉をナマエが言い出した。
それは今朝方にあった事で、突然のナマエからの申し出にドレークはぱちくりと目を瞬かせる。そんな事を言われたのは久しぶりだったからだ。思わず持っていた航海図をぐしゃりと握りつぶしてしまった。



「…そんな事をやっている場合じゃないんだ。 いつ海軍の手が此方へと伸びるか予断を許さない状況で」

『でも そのままでは、つぶれてしまう』



何が、と龍は言わない。彼女が知っている限りの人間の言葉で"それ"を語り伝える事が出来なかった。しかしドレークは気が付いたらしい。う…と言葉を詰まらせ、自身にも思い当たることがあるのだろう。彼にしては珍しく言いよどむような、迷う素振りを見せた。
『いいから 休息を』尚も龍は言い募る。その勢いに乗るように、傍で聞いていた航海士や操舵士も「そ、そうです!」と続いた。



「この先の地図に比較的穏やかな気候の孤島があります。そこで休息しましょう、船長」
「…だがそんな暇は…」
「今、海軍の殆どが別の案件に借り出されてるんです。逆に、休息は今しかないって考えませんか?」
『そう』


海軍時代からドレークを立ててくれる老齢のクルーからの言葉に、ナマエはうんと頷く。 そう、だから。 先ほどよりも少し強くなった物言いにドレークが「…分かった」と了承した衝撃はすぐに船内中を駆け巡った。
あの、ドレーク船長が休息を取るって! すごいな、誰だよ言い出したの! ナマエだよ、ナマエ! ああ、あいつか!
操舵士はすぐに舵を切った。船長の気が変わらない内に早く島へ着こうと、過去ないぐらいの速さで船を動かした。



『…』
ナマエは嬉しそうだ。表情こそ変わっていないが、羽ばたかせている羽が小刻みにリズム良くはためかされているのを見て、ドレークはしょうがないな、と笑った。
どうもこの龍に頼まれると弱い。同属、のようなものだから親近感が沸くのかも知れない。

ドレークは大地龍の頭を撫でた。ゴツゴツした感触のそこは、この船の上で誰よりも太陽に近い場所にいるせいで熱を持っている。ドレークは被っていた帽子をその突起に被せてやった。『?』なに?と言うような目でナマエが自分の頭を見ようとして目を動かしている。




それからドレーク海賊団は孤島にたどり着いた。嬉しそうに真っ先に砂浜に出て動かして疲れた羽を折りたたみ休み始めたナマエの傍に、グローブを外しマントを脱いだドレークも微笑みながら寝転ぶ。他のクルー達も同様だ。やれ釣りだ、やれ素潜りだ、日光浴だと騒がしい。



『ほら やっぱり休んだ方がいい』


そら見ろ、と言うようにナマエはフンと鼻息を吹かす。「そうだな」と答えたドレークに凭れかかりたいのか、『ねぇ あっちの姿になって』頭を胸に摺り寄せて来た。甘えてるのか、と笑ったドレークは要望通りの姿になってやる。すぐに嬉々として胸に擦り寄って来たナマエに気分を良くさせたドレークもすぐに微睡む。
眠気は、すぐにやって来た