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▼ 殺気立ちます


「あれも出し物の一つだと思うか?キラー」

「む?」


シャボンディ諸島GR1・オークション会場の入り口前に屯し、会場内にいる人間たちの様子を眺めていたキッドが会場の隅の方で何かを見つけ、それを指差した。
問われたキラーと、その後ろに控えていたヒートも「?」そちらへと眼をやる。出し物か、とはどう言うことだろう?と思っていたキラーの疑問はすぐに解けた。


そこにいたのは、少数の集団だった。
暗い青色の髪をオールバックにしたコート姿の男を筆頭に、その後ろに立つ何人かの――"何か"
それぞれ一様にマントを羽織っていて、フードを被っていないその者達の顔がよく見えていた。周りにいた人間たちも、あれは何だ、とヒソヒソと会話を交わしている声が聞こえる。


――異質だ。キラーはマスクの下でごくりと生唾を飲み込む。

被り物ではなさそうな狼の顔をした者に、長い触角のようなものが生えた虫のような顔をした者、そして手長族だとは思うがその手の数が4本もの大男に、これまた被り物ではないような狐の顔の者――
誰の眼から見てもそれらは"ただの人間"には見えない。しかし何よりも異質に感じるのは、その人ならざる者たちをさも当然とでも言うように従えさせている青髪の男だ。


「…オークションの客、でしょうな」

「フン……自分達の方がオークションの商品よりも珍妙な風体してやがるくせになァ」

「…キッド?」


彼らを見つめるキラーの赤い目に、"面白そうだ"と感じるときに浮かぶいつもの光が見える。おい冗談だろ、とキラーが止めるよりも早く、キッドはあの集団の方へと足を向けた。「ま、待ってくださいよ頭ァ!」ヒートが慌てたように追いかける。「…お前らはここにいろ」キラーも他のクルー達にそう言い置いてから二人の後を追いかけた。








≪………船長≫

「…分かってる」


自分たちに不躾な視線を送って来ていた輩の存在には気付いていた。
耳打ちしてきたインセの視線の先を辿らずとも、近付いて来ている集団が誰であるのかは分かっている。

ガチャガチャとした耳障りな金属の音が、会場の喧騒にも負けないぐらいに聞こえていた。




「――出品手続きなら外から回るんだぜ?」



「 ……それはわざわざどうもご丁寧に。君たちも誰かを売りに出すのかな?後ろの彼なんて高く売れそうじゃないか」



開口一番で何とも失礼な男ではないか。 背後からキツの「ひぃっ!」と喉を引き攣ったような声が上がったが、それは近付いて来た男たちに怯えてのことではない。失礼な物言いに苛立った船長の顔に恐れをなしてのことだ。


赤髪の男――ユースタス・キッドはニヤニヤとした笑みはそのままに、ジロジロとインセ達を見ている。
その視線を煩わしそうに手を振って払う素振りを見せたキツと、それを手助けしてやるように四本の腕をインセやウル達の目の前で振ってやるロンハンに、キッドはゲラゲラと笑う。「すげぇな!」――全くもって何が"凄い"のかは分からないが、不愉快に感じたのは確かだ。



「……ガキが俺たちに何か用事でもあるのか?」


哀れな人外が出品されていれば助けてやると言う名目の上でオークション会場に立ち寄ったのはいいが、まさかこんな面倒な海賊団の船長に絡まれることになるとは思わなかった。



「別に用なんてねェよ。ヘンな奴らを連れてるようだったからどんなモンかと見たくなっただけじゃねぇか」

「そうか。それならもう目的は達せただろう?―――いい加減目障りだから消えろ、クソガキ」

「…んだとテメェ」

「――ア゛?」



――やべぇ船長がキレてる!!
一触即発の空気を醸し出し始めた二人の間に、止めようと動いたウルとインセ、そしてキラーとヒートが割って入る。
「戦いをしたくて声をかけたわけではない、船長は連れて行くから場をおさめてほしい」
殺戮武人として名高いキラーには存外常識と言うものがあったらしい。船長の代役として「分かった」と返事をしたのはウルだ。
丁度、オークションの開場の時間が来た。壇上の上に司会の男が立っている。会場の片隅で行われていた海賊団同士の小競り合いなどもう客の者達は気になどしていない。会場の温度は一気にボルテージが上がったみたいだった。

「海で会ったら覚えてろよ」捨て台詞を残し立ち去って行ったユースタス海賊団の連中の姿を早々に視界から外したナマエに、キツはおっかなびっくりとした様子のまま声をかける


『みょ、妙な連中でしたねぇ』

「お前らの方がよっぽど"妙な連中"だろうが」

『うっ…ご、ごもっともで…』

「……ああクソ、胸糞わりぃな」


さっきのキッドのことを思い出してナマエは忌々しそうに吐き捨てた。「どうして最近のルーキーとやらはでかい態度の奴ばっかりなんだ」――ナマエが過去に出会った"最も態度のでかい者"のことを思い出して苛々が増長させられている。
どうやって船長の機嫌を治すよ、もう此処から一旦出るか?、と四人の人外達が相談を交し合っていると、何かの我慢が出来なくなったナマエが煩く捲くし立てているオークションの司会者の声に被せるように言い放った


「俺より背の高いガキは誰だろうと気に食わねェがな!!!」




わらっちゃだめだ、からかっちゃだめだ――プルプルと身体を震わせ、反応を取りたくて仕方がないウルとキツの両名を尻目に、一人生真面目にも船長を慮ろうとしたインセが船長からのとばっちりを受けている。理不尽に怒られたインセに、ロンハンはかけてやる言葉が出てこなかった。



もう、船長と超新星たちを会わせるのはやめた方がいいな

ただそう思うばかりである