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ナマエとキャプテンが恋人関係である事はハートの海賊団でも周知の事実だった。いつも一緒にいるのだ。単独行動を好む節があるキャプテンが同伴を望むのはナマエだけ。言葉がきついところもあるキャプテンでも、ナマエにだけは文句を言ったり悪態を吐いたりすることはない。部屋だってナマエはおれ達のような大部屋じゃなくてキャプテンの船長室で同室だったり、夜分に二人で酒宴を催してたりと良いこと尽くめだし。何となくだがおれ達クルーの中では、キャプテンは恋人がいても特別扱いしたりしないタイプの人だと認識していた。しかしやはりキャプテンも恋人には甘いらしい。寧ろ甘やかされているような気もする。でもまあナマエも良い奴だ。年上だが気さくで仕事だって進んで請け負おうとする。気遣いだってあるし飯を作るのも上手い。海賊でなければいい主夫になってそうな感じの男だ。愛だ何だと口やかましい女を恋人にするくらいなら、ナマエのように包容力のある男を恋人にするのも良いかも知れない、なんて思い始めてる奴がいる事は、キャプテンには秘密である。とにかくそんなワケで、おれ達クルー一同、キャプテンとナマエとの恋人関係を応援していたんだが、何とここに来て驚きの情報を入手してしまったんだ。







「キャプテンとナマエが実の兄弟同士って本当ですか!!?」


「…誰からそれを訊いたんだ?」

「ってことは本当なんすね!?」

「まままままマジっすか!!」




その情報が真実だと分かると、途端に今のこの二人の様子が可笑しなものに見えてくるんだから人間って不思議だ。どこからそれが漏れたんだ?と悩むキャプテンを膝の上に抱っこして「遂にバレたか」と平然としているナマエ いや、遂にバレたか、じゃない!


「どうして今まで教えてくれなかったんすか!」

「……それをお前らに教えなけりゃいけねぇ理由でもあんのか」


あぁっ!キャプテンからの殺人目線が突き刺さる! そう言われると確かにそれをキャプテン達がおれたちに教える義理はない。 でも少し寂しいと言うかそもそもえっ兄弟って本当なんですか?って言う気持ちの方が多すぎてそれどころじゃなかったりする。だってキャプテンとナマエ、全然似てないんだ。キャプテンの髪は青が薄くかかった黒髪だが、ナマエの髪はオレンジを溶いたような茶髪 どちらも地毛で染めているわけではない。顔つきだってシュッとしているキャプテンと比べてナマエは少し角ばっている形だ まさか異母兄弟…?と勘繰ると、すぐにナマエからの訂正が入る。「本当に本当の兄弟同士だぞ」……マジかよぉ!



「…まあ、知っちまったんならしょうがねぇ。 おれとナマエは兄弟だ」

「因みに俺が兄な」

「あ、それは何となく察せれた」

「そうか? 確かにローは弟っぽい気質があるからなぁ」


いや、そうではないが。どちらかと言うとナマエに兄気質がある感じだ。



特に隠していたつもりはないが知られたのなら開き直ろう、と言わんばかりにキャプテンは体勢をどろんと崩した。ナマエの胸にしな垂れかかるようにして抱きつく。いつも通りの光景な筈なのに、兄と弟と言う眼で見ると……怪しい世界に入り込んでしまったようだ。

しかしそう思うと、確かにキャプテンがナマエを見る目に色んな意味が篭っていたような気がする。
「好きだ」と言うような眼の他に、「憧れ」のような色を含んでいたのだ、あれは。
どんな経緯で兄弟同士で恋に落ちたんだろう。興味はどんどん沸いてきた。だがキャプテンは、そんなおれ達の思惑を打ち消すように、ナマエの胸に埋めていた顔を上げておれ達を睨む



「……おれ達が兄弟同士だったからって、付け入る隙があると思ったら大間違いだからな」


「わ、分かってますよキャプテン!!」


より一層強固な壁が立ち塞がったに違いない。

ナマエも、脅しをかけたキャプテンを抱きしめながら困ったように頬を掻いた



「あんまりローを刺激してやらんでくれよ」

「そ、それは勿論分かってるぞ」

「そうか? ローの嫉妬心をつっついたら、俺がローに監禁されかねんのだ」

「監禁!?」



ああ。と頷くナマエは平常だ。おそらく、常日頃からキャプテンにそう宣言されて来ているんだろう。恐ろしい話だ。キャプテンならやりかねない。ナマエの人権を尊重する為にも――いや、寧ろ嬉しそうじゃないか?ナマエの奴――極力この二人の世界の邪魔をするのは避けた方がいい。


おれ達がまだ部屋にいるにも関わらず、二人はキスをし始めたからそろそろ退散することにしよう。どうせ暫く二人は出て来ないだろうし、ナマエに関しては今のその状態でもキャプテンに"監禁"されていることに変わりはないのだから。