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▼ 取るに足らぬこと


「何やってんですか?ホーキンス船長」

「…ナマエか」


見ての通りだ。占っている。


暗く、意図的に外界の光を遮断している船長室へ こうも容易く入室しようと考えるのは、ナマエだけだ。他の者ならばまずやらない。船長室への入室それ即ちホーキンスの私室への入室 恐れ多くて緊急時以外は立ち寄らない者と、その空間に入ればどんな事が身に降りかかってくるのかと恐れ入らない者が大半の中で、ナマエはそんな事を深くは思考していなかった。



「…何か、用か?」

「針路予定図が出来上がりましたんでご意見をば頂きたく参上しましたよ、っと」


何枚も束ねられた冊子を空いている机の上に置いた。ホーキンスは並べたカードから目を逸らさないまま「ああ」と返事をする。そこに置いておけ、後で見る。と言う意味の「ああ」だろう。それを知っているナマエもここで用件を終わらせることにした。すぐに退出しようとしたが今日は何となく、広げられているホーキンスの占術のカードが気になった。


「今日は何について占ってたんすか?」

「ナマエとの進捗事項についてだ。 ところでナマエ、背中にやけに目玉の多い牛のようなモノが取り憑いているようだが大丈夫か?」

「えっしんちょ…?って、ええ!?今サラっととんでもないコト言いましたよね船長!? 祓ってえ!祓ってくださいせんちょおおおおお!!」


ギャーギャーと叫びながら、ナマエは腕をバタつかせ騒ぎ始めた。

静かな船長室の、赤いベルベット絨毯を踏み締めながら喚くナマエの姿を一頻り堪能したホーキンスはよいせ、と殊更ゆっくり立ち上がってからナマエに近寄った。騒ぐその体を片手で捕まえ、バチーン!と背中を強く叩く。「おぐっふ!?」痛みによって床に崩れ落ちるナマエに「終わったぞ」と声をかければ、「あ、あざーっす…」涙声の返事が返って来た。


「…あの…絶対これ、痣になったなって感じがしてるんですがそれは…」

「…そんなに強く叩いたつもりはないのだが…」

「ええええ自覚がないんですか!? 船長…恐ろしい人だ…!」

「分かった、診てみよう 服を脱げ」

「ええええええええはい!?ちょホーキンスせん、」



ふんぎゃああああああああああ!!!























「この船って猫とか飼ってたっけ?」
「あいつはネコじゃなくてタチじゃね? つか猫とか言うきゃわいいものはいないけど、それ以外のものならたんまりいんだろ」
「おい、食堂の皿が独りでに動いてんだけど」
「廊下に置いてあった水張ったバケツが風もないのにひっくり返ってんですけど」
「船蔵んとこのドアが勝手にバッタンバッタン言ってんだけど」

「「もうやだこれ」」