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▼ 恋とは恐ろしいものですね


「一緒にお茶でもどうだろうか」
「茶? そんなの腹の足しになんねーぞ?」
「ならレストランへ行こうか 美味しい店のオーナーに知り合いがいてね」
「肉食わせてくれんのか!?」

「"食わせてくれんのか?" じゃないでしょルフィー!!」



一体どこほっつき歩いてんのかと思ってたらこんなところで何やってるのよー!

怒鳴り声が雑踏の間を抜け、露出の激しい姿の美しい女性――ナミが肩を怒らせながら歩いてきた。
ぶらりと船を出たままなかなか帰って来なかった船長――ルフィを心配して様子を見に来たというのに、当の本人は何やら怪しい紳士に捕まって誘われている。

今の今までルフィを拘束し、あまつさえ食事に誘っていた男は新しく現れたナミにも笑顔を向けてその細い手を優しく取って軽やかな動きで口元に運んだ


「おや此方の女性もお美しい…どうかな?僕と食事でも…」
「あら、ありがとう。でもそんな暇じゃないの、ごめんなさーい」



男からのキスと誘いをかわしつつ、ナミはルフィの耳を引っ張りながら小声で問い詰めた


(一体何やってたのよあんたは! この男だれ?)
(うーん知らねぇ!なんか急に話しかけてきたんだ)
(そんな奴の食事の誘いに乗らないでよ!また余計な面倒を起こしたらどうすんの!)


ひそひそ話をしながら睨んで来ている二人を 男はニコニコ笑顔で見つめて来る。怪訝な顔で見られていると言うのに、一向に気にする様子がないからこのまま立ち去るような感じでもない。

大方、ルフィが"最悪の世代"であるルーキーだと知って話しかけた興味本位の輩だろうと、ナミはそう結論付けた。今までもよくあったことだ。色んな難癖や騒ぎを呼び込み、その都度巻き込まれてきた身としてそう言う火の粉は事前に振り払っておかなくてはならない。そもそもこの島に立ち寄ったのも補給が目的だっただけであり、あまり長居するつもりもない。
さっさと追い払うなり振り切るなりして仲間たちの許へと帰ろう。ナミからの提案にルフィはそうだなーと同意を示した。基本的に航海士である彼女の言い分には素直に賛同をする船長である



「じゃあと言うわけで私たち先を急ぐからこれで…」
「なら僕も付いて行って構わないだろうか?」
「はい?」


立ち去ろうとしたルフィの手を奪って引き止めたこの男は一体何が目的なんだ。まさかルフィのミーハーなファン?とも疑ったが、そんなまさかとも思う。どこに海賊を慕ったりする町民がいるものか。しかし男はルフィの手を放さない。「な、なんだ??」と焦るルフィに更に顔を近づけながら満面の笑みを崩さないままだ



「おっさんは海賊に興味があるのか?」
「いいや 僕は君に興味があるんだよルフィ君」
「…おれ?」
「ああ それに"海賊狩り"君にも興味があるし、"黒足"君にも会ってみたい。"ソゲキング"からサインも頂きたいし、花の君…ああ、ニコ・ロビンとお話もしたいんだ」


「ルフィ、行くわよ!!」



――この男、なんかおかしい!

仲間たちの名前を羅列していた時の顔が"愉悦"そのものだった。熱狂的なファンだとしても、恍惚染みたその表情を直接見せられてしまえば悪寒だってする。ただでさえ、ルフィは呑気に「へー!おっさんはあいつ等のファンなのか!」と言っている。確かに名前を挙げ、その後にやってみたいことを述べてその内容はどれも穏やかなものばかりだったが、表情が"それ"と語っていないのだ。絶対に腹に一物を抱えたろくでもない男だ。ナミの中の何かがそう訴えかけて来る。自分から発せられる危険信号を無視するなんてことはしない。本能のままにそれに従うのみ!



「ル、」

「特に僕は君が一番好きなのだが、僕では駄目かな?」
「ん? どういう意味だ??」
「つまり僕とセックスしてほしいんだ」


「駄目に決まってるでしょうがー!!!」



思わず雷雲を呼び寄せぶち当ててしまったが、あの男なら問題ない気がする。

「セック…?」とクエスチョンマークを出したままぼけっとしているルフィの手を引いて、今度こそ男がついて来ていないかを確認したまま走り出す。背後から「待ってくれ」なんて声が聞こえたような気がするが、今は無視して走って早く船を出そう。
海に出てしまえば、きっと振り切れる











「そう思ってた時が私にだってあったわよ……」


「おっさん、どうやってサニーに乗って来たんだ!?」
「どうやら恋する男に不可能はないらしくてね。突然の妖精が落とした雷に足止めを喰らうこともなくルフィ君と言う愛らしい背中を追いかけて走って来たんだ」
「へー!!なんかすっげー!」



「ああもう……なんなのあの男は……」
「どうしたんですかナミさん!!あの男に何かされたんですかうおおおお男サンジ、ナミさんの溜息を1つでも掬い取るべくあの男を追い出して来ます!!!」
「あああ駄目!サンジ君行っちゃ駄目!近付いちゃ駄目!!」