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▼ リ・ターン


服を剥がれ、裸体のままベッドに横たわっていたおれの肩を舐めたナマエの舌は未だ熱を持っていた。あれだけおれの色んなところを舐めたと言うのに、まだコイツも、舌も、力が有り余っているらしい。


「…野郎の身体なんか舐めて何が楽しいんだか」

「トラファルガーのだから舐めるんだ。他の人間なら裸に剥くところから嫌だね」

「変態め」

「褒め言葉だ……って言っといた方がいいのか?」


変態と言われて微妙な顔をしたこいつは、脱いでいた衣服に着替え、髪を梳かし、自分の船に戻る準備を進めている。

ナマエは海賊団の船長をしていた。名目上海賊と言う枠組みに入っているが、おれと敵対関係と言う関係でもない。
ナマエは宝を狙わない。狙うのは海軍船だけ、と言う珍しい海賊だった。
海を汚すのは海賊だけではない、と言う一つの持論を持つナマエは他の海賊たちが無事に航海が出来るように――可笑しな話だが――海の安全を守る為の船乗りだった。

航海の途中で出会ってお互いに意気投合し合い、気まぐれで身体を重ねるようになってからはナマエはフラリとおれに会いに来る。
「いい航海は出来てるか? トラファルガー」
出会い頭の言葉だ。 ナマエはおれのことを姓で呼ぶ。「ローと呼ぶのはまだ早い」なんてよく分からない考えを持っていて、幾らおれが許しを出しても呼ばない。
まるで一線を引かれているような気がして、こちらが不満になるだけだ。



「身体は大丈夫か?」

「…どう言う意味だ」

「さっき俺が中に出したのを掻き出してあげたから、またトラファルガーのムスコが元気になってないかなと思って」

「余計なお世話だ。変態と一緒くたにするな」

「トラファルガーだって世間の間じゃ違う意味で変態呼ばわりされてるぞ。俺も最初にお前とセックスした時、朝起きたら身体がバラバラにされてるんじゃないかと思ってドキドキしてたもんだ」


…だからナマエはおれよりも先に目覚めておくのだろうか、なんて考えてしまった。

「よし」最後に外套を羽織ったナマエが力のいい掛け声をかける。ああ、もう行ってしまうのか、なんて絶対に言ってはやらないが、おれがこう思っていると言うことをこいつは悟っても良いと思う。つうか気付け。



「じゃあな、トラファルガー そろそろお前は新世界の海へ行くんだろ?」

「シャボンディ諸島はもう間近なんでな」

「そうなると暫くは会えないな」

「な、」


残酷な宣言を笑顔で突然言ったナマエに絶句する。


「だって俺は、新世界の海でも通用する程まだ強くないんだ」


しがない海賊船長なんでね。実力の差は明白なんだ、沈没されてしまう。笑って言ったナマエに、ああ確かにそれもそうかなんて思ったおれがいた。

別に、いい。ここでコイツとの関係が終わるのならそれまでだ。らしくもない言葉を言って引き止めておくほどの存在でもない。ナマエが、他の奴よりも別段セックスが上手いわけでもテクニックがあるわけでもない。 ただ、ナマエと言う人間が面白くて好きだったからで、



「だから、あんまり新世界の遠くには行かんといてくれよ?」

「…は? どう意味だ」

「直ぐに追いつくようにするからさ。出来たら新世界の入り口ら辺で待っててくれないか?」


俺が追いつくまでに別の恋人とかを作ってたら、そん時は泣いちゃうかもなぁ俺



「……てっきり別れるって言われたのかと思ってた」

「俺は嫌だぞ? トラファルガーの身体は美味いんだ。暫く舐められないと思ったら切なくなってきたぐらいだ」



「最後に一舐めしておこう」そう言っておれの頬に顔を寄せて来たナマエ
舐められるだけ? そんなの癪に決まってるし、おれはそんなんじゃ面白くねぇんだよ。

近付いてきたナマエの頭を思い切り引き寄せて唇に吸い付いた。
いつもおれの身体を舐めるナマエの舌はおれが絡め取ってやったから、今はおれの勝ちだろう?