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▼ 全ての者が向かう場所へ


停泊していた『ニューゲート』と呼ばれる島での突然の邂逅
その相手は誰が予想出来たか。白ひげ海賊団船長四皇エドワード・ニューゲートの父と名乗る男、エドワード・ナマエだった。






ウズウズしていたのは歳若いエースだけではなかった。
白ひげ海賊団の古株であるマルコも、ジョズも、普段はあまり感情を表に出さない者達や、自分の過去のことをあまり話そうとしなかった船長に対して興味を抱いていたクルーは皆、
長旅の荷物を置いて寛いでいるナマエへと視線を注いでいた。

未だ、再会によって言葉を失くし感極まっているニューゲートの背中を大きな手であやしている、
その数多の視線を受け止めていたナマエは苦笑いでそれに答えた。



「……特に面白い男ではないぞ、俺は」



ただの巨人族の者だ。それ以上に大小はない。 そう謙遜して見せたナマエに、さっきから我慢の限界が訪れていたエースはたまらずに「そんなことねぇよ!」と言葉と共に飛びついた。


「な、なぁ!オヤジの小さかった頃の話、何でもいいから聞かせてくれよ! あ、いや聞かせてください!」



エースの言葉は皮切りになったようだ。足踏みしていた他の者たちも一様に声を上げる。全員、船長の話を聞きたがった。それは今まで、実現するとも知れなかったことだ。酒を飲めば気分を良くし、ぽつぽつと自分の過去のことを話してくれたことはあったが、父親が登場したことは今までに一度もない。

大勢の者達から乞われているナマエは皺の混じる顔に静かな微笑みを浮かべ、「…お前の息子たちはとても威勢がいいな」と隣にいるニューゲートに伝えた。それに対してニューゲートも苦笑を返す。ようやくいつもの調子を取り戻しつつあった。あまり親父に迷惑をかけねぇようにな、とエースたちに告げると、すぐに「オヤジが"親父"って呼んでるとややこしいな!」と言うからかいが返ってくる。
息子たちに揶揄われている、そう自覚しているニューゲートはそれでも仄かに笑って見せた。自分だって久しぶりに会ったナマエと積もる話も聞かせたい話もたくさんあったが、息子たちに譲ってやるぐらいの寛容さは持っているつもりだ。
「程ほどにしとけよ」 分かってる! オヤジに返事をしたエースや、サッチ等は嬉々としていた。







昔話を聞かせてやりたいとは思っているが、何せ記憶力が良くない。細部までは覚えちゃいねぇよ、と前置きしたナマエにそれでもいいから!とせがんだクルーの数多数
息もつかせぬ質問の嵐が飛んで来たと思えば、多くの感嘆の声が上がりより一層テンションを大にする。



このままでは、延々と父を拘束されかねんとニューゲートは息子達に宴の準備をするようにと命令を出した。


「肉を調達して来い」
それも大量にだぁ、とニューゲートが焚き付ければ息子たちは全員やる気を見せる。マルコもエースもジョズもうおおお!と活気の声を上げ、父との出会いの場所である『ニューゲート』の島の森へと踏み込んで行った。荒らしてくれるなよ、と心の中で呟く。まあ、あの息子たちならば大丈夫だろう


「…ようやくニューゲートの順番か?」
「順番てなぁ親父……別におれは順番待ちをしてたわけじゃぁ、」
「なんだ、違ったのか」
「………」


ほら見ろ、違わないんだろうが。

やはり父親は全てを悟っているようだ。ナマエはニューゲートの些細な感情の変化に気付き、落ち込んだその肩を叩く。
その手の感触にでさえ涙腺が緩もうとしているのには参ってしまう。こんな事で泣くような歳でも、柔な人生を歩んで来たわけではないのに。


「お前の船の料理は美味いのか?」
「あぁ、美味いな。しかも健康面まで考えてバランスもいい」
「ははは、すっかり養われてるんじゃねぇのか?ニューゲート」
「…親父に言われたくはねぇよ。おれはあんたの息子だぞ」


それもそうだ。とナマエが同意をしてくれて良かった。もし流されでもしたらどうしようかと考えていた



ナマエはニューゲートの全身を上からジロジロと見下ろしている。少し居心地が悪い。なんだよ、と非難気味に見上げれば、またも皺くちゃな笑顔が返ってきた。


「俺に似たなぁ、と思ってな」


「お…やじ、に?」
「面構えが俺にそっくりだ。そう言われないか?」
「…言われるも何も、今日初めて他の奴らの前に顔を出したんだろうが」
「ならこれからは言われるだろうな。そっくりな親子だな、と」


言われるだろうか。ニューゲートはぼんやりと己の顔がどんな作りをしていたかを思い出した。長らく鏡などと向き合ったことはなかったが、こんな老いぼれた顔が、今目の前にいる父親と似ているなんて何やら不思議な感じがする。


「……」
「…」


会話が止まる

性格的にべらべらと口を開かない者ばかりとは言え、こうして言葉を紡げなくなってしまうのは勿体無い。

だが、心地好くもあるのだ。

穏やかな波、
暖かな太陽の光が降り注ぐ
始まりの島で、父親と二人きり



「…あの世もこんな感じならいいんだがな」


ポツリと上から聞こえて来た声に反応が遅れる。


あの世?
死後の世界のことを考えるようになったのか親父は



「…ニューゲート」

「? なんだ、親父」



「お前は、後から来るんだぞ」




「…………ああ」




息子たちが呼ぶ声が、聞こえる