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▼ ぼくだけの幸せ


ドフラミンゴは子どもが好きだった。

子どもは良い 何がいいって、大人の人間と違って 良い意味で"鈍感"だ。

常人ならば気が触れ頭がおかしくなり気絶するような「覇王色の覇気」をぶつけても、子どもはケロリとしていることが多い。それは子どもが持つ、その者への恐怖心を推し量れないと言うことに値する。

覇気の持ち主と自分との力量の差を分かっているから人はドフラミンゴを見て絶望し意識を喪失する。

だがしかし、それが子どもならばどうなる。

子どもはいい。子どもは純粋であり純真であり無防備であり無垢であり無知だ。
愛玩するに匹敵する存在だ。女とはまた違ったベクトルからドフラミンゴを癒してくる。なのでドフラミンゴは、子どもが 大好きだった。







「ドフィ はらへった」


ナマエは女の膝に座りながら、眠そうな声でそう告げた。

ドンキホーテ邸の庭園で仲間たちとの会話に花を咲かせていたドフラミンゴは「そうかァ」と殊更笑みを深くし、ナマエの面倒を看ていた使用人の女からナマエを奪い取る。

「きゃっ」その際、女の頬にドフラミンゴの手が強く当たった。
痛みに女が小さく悲鳴を上げる。


「…ん〜?」


ドフラミンゴは露骨に不機嫌さを露わにした。

基本的に女には淫靡に且つ弱々しく居てもらいたいと思っているが、今はその女らしい訴えが耳に障ったらしい。


女は「ひっ…!」と喉を引き攣らせた。粗相をすれば殺される。それを十二分に理解していたからだ。
ドフラミンゴの指が糸を手繰るように動き出す。女は恐怖から身を固くした。庭園にいた他の者たちは気にも留めない。女の身体を見えない糸が纏わりついて来るような感覚がした。そして、



「やだ、ドフィ いまは僕だけをみてよ」



そのあまりにも幼く緊張感に欠けた声は、直ぐにドフラミンゴの機嫌を良くさせた。


「――あァ、そうだなナマエ 悪かったなァ」とろけるような甘い声で腕に抱えている子どもに詫びをするドフラミンゴの姿を 女はガタガタと身を小さく震わせながら見上げている。
しかし、もうドフラミンゴの方は女にすっかり興味を失くしたようだ。
何度も何度も 悪いな、悪かったなと言ってナマエの小さな顔に頬をすり寄せている。



「何が食べたいんだ?ナマエは」

「んー…とねぇ、 ドフィが たべたい」

「―――フッフッフ! 誰だ?こーんなにイタイケなナマエに、そんな事を吹き込んだ奴はァ!」

「…ドフィ、おいしそう」



肩にかかっているピンクの羽を指で弄っているナマエの目は眠そうに微睡んでいる。
寝惚けてるな、と思ったドフラミンゴだったが、まァいいかと更に機嫌を良くした。国内中の有名なコックを呼んでの大晩餐会でも開きたい気分だ。しかしそれではあまりにも時間を食ってしまう。



それではナマエの"おねがい"に沿えないではないか