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「#幼馴染」のBL小説を読む
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▼ ひとのきずなを測ったー


どうもサカズキがおいたをして懲罰房に入れられたっぽいと聞かされたので俺はこうして様子を見に来たわけですよ。
でも様子を見に行く前にこうなってしまった経緯とかを知っといた方が有利だよねってことでまず聞き込みから始めたんすよ。なんてナイスで冷静な判断だ。で、


「何かの間違いでっしゃろ」

「うっさいよナマエ って言うかサカズキさんを懲罰房に入れたのおれじゃないからね」

「もうこの際クザンじゃなくてもクザンがそこにいたから聞いてるわけよ。で、サカズキ何やったんだ」

「知らないってば おれ何にも知らないの」

「寝てたからだろ」

「寝てたからね」



駄目だ。このクザンまったく使い物にならなかった。大体何なんだアイツ。俺より年下のくせに、20歳にして既に貫禄出てないか?若いからってあんまり舐めた行いしてるとセンゴクさんに怒られ……あ、そうだセンゴクさんに訊いてみればいいんだ。あったま良いな俺ってばー



「って言うわけでサカズキは何をやらかしちゃったのですかセンゴクさん」

「…お前こそ上司に対してその態度は何だ」

「申し訳ありませんでした。本日一二〇〇時に起きた本部訓練所 傷害事件の当事者であるサカズキ氏の処遇及び安否を確認したく参上した所存であります」


バカ丁寧に敬礼をして答えるとセンゴクさんは溜息を吐きつつ「…冗談だ。お前のそんな口調は気持ちが悪くなる」なんて言った。失礼なことだ。まあとにかくそんな事はいいですからサカズキ!サカズキの現状教えてプリーズ!


「訓練中のサカズキが同じく訓練中であった海兵の腕を焼き落とす騒ぎがあったのは知ってるか」

「…!」

「…そうか、知らんかったか。 その騒ぎが起きる前にどうやらその男と口論になったらしいが…手を出した事に関してはサカズキに全面的に非がある。現在男は治療中だ。見舞いに行きたいのか?」

「…いえ、サカズキの方を詳しく教えてください」

「あいつなら通達の通り地下の懲罰房にいる。面会程度なら許しているから行くんなら行け」



おっと、あっさりとお許しが出た。 おそらく、現在治療中らしい男が目を覚ますまでサカズキの処罰は保留されてるんだろう。それに……まあいいか。とにかくサカズキの様子を見に行こう








薄暗い石の階段を下に向かって降りれば、ひんやりとした空気が漂ってきた。扉の前に立っていた看守に挨拶をする。「どうもー」「む…? ああ、センゴク殿が言っていた者か。通れ」センゴクさんてば気が利くなー。有り難く通らせてもらおう。

1つ、2つ空の懲罰房の前を通り過ぎ、目当ての人物のいるところにまでやって来た


「よっサカズキ〜」

「―! ナマエ……か」

「そう、俺 どうしたんだよこんな所に入れられちゃってさぁ」


壁に寄りかかっていたサカズキはのそりと起き上がって柵の前に寄ってきた。
…その右頬が赤く腫れ上がってるのは後で言及するとしよう


「……」

「…口喧嘩したんだって?」

「…んなに生温いモンじゃないわ」

「何て言われたんだよ、そいつにさ」


懲罰房に入れられていると言うのに、サカズキには海楼石も付けられていない。その手で鉄の柵をギュっと力強く握ったサカズキの目には、その当時の口論の内容を思い出して強い憎悪が宿る



「儂を 否定した」

「…」

「腑抜けた心構えしか持っちょらんくせに、他人を嗤うことにゃあ忙しくする。弱い奴は"正義"にゃあなれん。それを 分からせただけじゃ」



―――いかんか


そんな理由では駄目なのか―― そう俺に問いかけて来たサカズキの目には、良くも悪くも迷いがなかった。本当にこいつは、どこまで行っても『自分のことが大事』な奴と言うか…


「…いかんこたぁないが」

「……じゃあ何じゃ」

「サカズキがそうやって"自分"の為に主張ばっかしてたら、また今日もみたいに懲罰房に入れられるぞ」


――だが、入れられるだけだ。サカズキが本格的に罰されて、海軍を追われるようになることは、ほぼ無いと言っても過言じゃないはずだ。 サカズキのような実力者を 今の海軍が手放すわけない


「…お前が懲罰房に入れられたら、俺が暇になるだろー?いいのか、俺が暇んなっても」

「知ったことか」

「お?まじで言ってるのか?いいのかー?俺クザンとばっか話しちゃうぞー?そんでいつの間にかクザンと親友になっちゃうぞいいのかー?」

「…どうでもええわ」


なんてツレない発言をするサカズキだったが、その目が露骨に「嫌です」って言ってるのが俺には分かったので寛大な心で許すとしよう。



「とりあえず大人しくしとけよ、な?ほんで早くココから出て来い」


いいか?分かったな? サカズキはダンマリだったけど小さく頷いたのを見逃さない。
よし、と頷いて柵越しにその頭を撫でた。「じゃあまたな、サカズキ」

一応この後、治療中の男の様子も見に行ってみようか。果たして同情に値する人物ならばいいが