30万企画小説 | ナノ
×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -


▼ ロータス効果


この人は、朝日が昇ってしまえば砂となってこの腕の中から消えるのではないかと思っていた。


だが現実はナマエの味方した。
クロコダイルは、消えていなかった。ナマエの腕の中でスヤスヤと眠っているままだ。
もしかしたらナマエは夢の中にいるのかもと考えた。行為が終わってから後、クロコダイルの為の後処理を済ませてからはずっとこの人の寝顔を見ていたつもりだったが、無意識の内に眠りに入ってしまい、それが今この現状なのかも知れない。



「………何言ってんだ、俺」


「全くだ。うるせぇ」

「!?」



腕の中の、乱れた前髪の隙間から窺ってくる強い瞳に射竦められる。
聞かれてた、と言う気持ちよりも、起こしてしまった、と言う気持ちの方が大きかったから慌ててナマエは謝った。クロコダイルはそれさえも煩わしそうに眉間に皺を寄せた。



「頭に響く。ちったぁ静かにしてろ」



咎めるような言葉だ。
だが、クロコダイルのその声が少し掠れ気味だったのがナマエの想いを増徴させた。
自分が、この人の喉を枯らせたのだと思うと、言いようもない気持ちが膨れ上がってくる。情事中の様相を思い出して否が応にも頬に熱を呼び起こさせた。

そんなナマエの表情が目に入ったのか、クロコダイルはまたも眉間に皺を寄せる。―が、その表情は、先ほどのソレよりも幾分照れが混じっているようだ



「………何、考えてやがる」

「い、いえ…!」

「くだらねぇ事だったら、水分抜くぞ」

「う…!」



貴方からすればくだらないことを、考えていました。
正直に言うのも、嘘を吐くのも、どっちも出来ずに押し黙れば、クロコダイルは言葉での追求を諦めたらしい。その代わりにハァ、と溜息を吐いて、ナマエの腕の中でモゾモゾと体を動かし、その拘束から抜け出してナマエに背を向けた。



「予定起床時間までおれを起こさなかったら、明後日の夜にまた 呼んでやる」



次のこの人からの誘いだった。
ナマエは嬉々として頷こうにも、頷いてもクロコダイルの目には映らないし、
返事をしようにも彼を起こしてしまう。

行き場のない嬉しさをどうにかしようと考えて、クロコダイルの腹にまで掛かっていたシーツをゆっくりと肩口にまで上げた。

これぐらいの事しか、今のナマエには出来なかった