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▼ パターンE


イカれてやがる。
それは恋人を裏切り娼婦館に入って行ったマルコ、の、姿を追いかけて中へ入った俺のことだ。
いやーな匂い、妙な臭い、アレやコレやらを思わせるようなくさい臭いが辺りに充満している。
マルコを追いかけて入って来ただけの俺を 当然客だと思った受付の男が「ご利用ですか?」と声をかけてきた。うるせーなご利用じゃねぇんだよ話しかけてくんな。悪いが今の俺の機嫌は下降中だから極力関わらないでくれ



「訊きたいことがある」
「? 何でしょう」
「此処に、胸に大きな刺青を入れた男が来ただろ」
「…刺青?」
「白ひげ海賊団のだよ」



受付の男はあぁ、と合点が行ったらしい。「いらっしゃいましたね」やっぱそうか。それにしてもモラルの低いところだな。利用客のことなのに、誤魔化しもしないなんて。海賊を相手に客商売をしているとは言え、もう少しこう…まあいい。重要なのはもっと別なとこだ。



「でさ、その男が行った部屋に案内してもらいてぇんだけど」



――出来る?



一般人に銃を突きつけて脅してる俺も大概外道だなーー


コクコク、と顔を青くさせぎこちない動きで頷いた無辜の男に心中で平謝りをして、案内する背中について歩く。

一際華美な装飾が目立つようになった廊下に出た。悪趣味、としか言いようのないシャンデリアが天上から吊るされ、その横の壁にはスプレーのような塗料で『死ね×××野郎!』と落書きされている。 娼婦館なんて、若い頃に一度試しに女も抱いてみろと友人に誘われて行った以来だが、あの頃とあまり変わらないものだなこう言う場所は。



「……」



一つの扉の前で受付の男が立ち止まる。無言のままに視線と指を動かし、この部屋が目的の場所であることを告げていた。 そこからは、あまり受付男のことに意識を回せなかった。

扉一枚挟んだ向こう側から、女の嬌声と聞き覚えのある男の声がしたからしょうがない
怒りと言うか、興奮が頂点に達したみたいでドアノブを回そうとした手がガクブルと震えた。使い物にならない。

もう後のことなんて知るか。どうにでもなっちまえ



「邪魔すんぞー」



ドアノブが上手く回せなかったので蹴破りましたが問題ないですか?



「えっ…!?」

「……ナマエ…!?」



ええ、はい、ナマエさんですけど。



「は?え、な、ナマエどうして、」
「いやいやいや、どうした?じゃないよな。俺の方こそ訊きたいぐらいだわ ――何やってんだ?マルコ」



言い訳なんて出来ない状況なのはアイツも分かってるみたいだ。言い逃れ不可能。金髪ロン毛が美しい裸の女性を組み敷いてるんだからな。ああ、そもそもこんな場所にいた、ってのが動かぬ証拠になるか。


「浮気っすかーマルコさーん」
「 ちが、」
「は? えーっと、何が? 何が違うんすかね? 俺ってば学はねぇけど、生憎とガキじゃねえんでこの状況がどんな状況かは理解出来ますけどー」


後ろにいた受付の男が「そっちか…」と呟いてんのが聞こえて笑えた。大方女の方に用があると思ってたんだろう。 ぶっちゃけて言うと、こうなってくるとどっちも憎々しく感じられるけど

行為の臭いが感じられるベッドに大股で近付いて、何をするでもなく、二人を見下ろしてみる。マルコは上体を起こして未だ信じられないものを見るような目で見て来るけど、女はシーツで体を隠して俺の方を怖いものを見るみたいな目で見ていた。睨み返してみると直ぐに怯んだ。



「…どうして此処が分かったんだよい」
「ん?見えたから」
「見え…、」
「俺に見つかるとかって、お前も爪が甘いわなぁ」



やるならもっと上手くやらねぇと、 って言った途端、マルコが思い切り抱きついて来た。



「ちょ、離れろマルコ」
「わ、悪かったよいナマエ! つい、その、我慢出来なくて」
「…言い訳されたかったんでも、やったことの理由が聞きたいわけでもねーんだよ」
「嫌だ!言わせてくれ、でないとお前は、」
「ああ、このまま別れてくださいって言うね」



って言うかもう本当離れてマルコ




浮気現場に踏み込んでみた