今日は今朝からドレークの姿を見なかった。
その異変に気がついたのは積み重ねていた蔵書の山を半分ほど片付けた時で、クルーに聞いても、コックに聞いても「船室からまだ出られてないんですよ。ナマエさんなら知ってるかと思ったんですが、違うんですか?」と返される始末。ドレークのことなら何でも把握していると思われてるようだが、勿論そんなことはない。しかし、やはりドレークにしては珍しい事態であることに間違いはない。クルー達は全員、船長の船室に入るのを遠慮しているし、様子を見るのは自分の仕事だろう
「ドレークー?」
ノックをしてみるが返事はない。だが中で何かがモゾモゾと身動きしているのは感じ取れた。
廊下の陰から此方に応援の眼差しを送って来ていたクルーにうん、と頷き、再度試みる
「おい、いるんなら返事をしろ みんな心配してるぞー」
心配してます!、船長ご飯食べに出てきてください! 同志たちの声援も俺の声も届いてない筈はないんだが。あのドレークが返事をしないなんて、余程の状況でない限りありえない。
まさか…!と一抹の不安がよぎる。
知らない内にこの船に海軍の回し者が潜入していたのか!?
「ドレーク!!入るぞ!?」
「ちょ…!」
何かのか細い声のようなものが聞こえたが、気にせずに扉を蹴り破る。
吹き飛んでいった扉がガタン!と大きな音を立てながらドレークの部屋の床に落ちる。その傍らで、小さい人影がモゾリと動いた。…!?
「………な…」
「………!」
「…ナマエさ…ん?船長、いらっしゃいました…?」
いるには、いた
しかもそれも、遠いとおい昔に見た姿で
「な…んで、!けやぶって、入ってくるんだナマエ!」
「………は…?え…、ド、ドレーク…!?」
「船長!?」
クリクリ坊主の頃のドレークがそこにいた
「……これまた思い切った変化を遂げたなードレーク。 この場合、恐竜時はどうなるんだ?ラプターっぽくなるのか?」
「……今はそんなことよりも他にはなしあわなければいけないことがあるだろう」
「口調はまんまドレーク船長ですね!」
「本当だまったく。折角ちっこいのに可愛くないなー」
「う…!うるさい!おれだってこんらんしてるんだ!」
能力者のせいでも悪魔の実の副作用でも何でもないらしい。
ただ、"こう"なってしまう前に一度身体に激痛が走ったと言うから、一応船医に見せようということになった。
だから、小さいドレークがヨタヨタと歩くスピードでは遅いだろうと思って抱っこしてあげたと言うのに、ちびっこドレークは腕の中で暴れる暴れる
「ちょ…、おち、落ち着けドレー…ク!」
「は、はなせ!おろせナマエ!」
「お前が歩くより、俺が連れていくのが、早いし効率いいからだって!」
「そ…それでもおろせ!歩ける!走るから!」
危ないですよ船長! お願いですから大人しくナマエさんの腕に!
うちのクルーは全体的に年齢が高いから、年寄りに囲まれた孫のような図になっているのは否めない。 嫌イヤ!と頑なになって否定するドレークの姿も正に駄々をこねる子どものソレで、昔のアイツはとんと素直な泣き虫だっただけに、小さい姿で強情っぱりなドレークと言うのも中々レアな光景だ
うん、だんだん慣れてきたぞこの状況に
原因不明の幼児退行を見せたくなくて引き篭もっていたドレークには申し訳ないが、
今はもう俺を含め事情を聞きつけやって来たクルーも一様にウェルカムモードだ
船医でさえ診察が終わって異常がないと見るや否やあのデレデレ状態
普段はとっつき難くクールなドレークと、ここぞとばかりにコミュニケーションを取ろうとしている
「お、おまえたちも!ちゃんと針路確認してるのか!?」
「天気は良好、波間も穏やかであります船長!」
「海獣や海賊船の影は見えませんよドレーク船長」
「そ…そうか…いや、そうじゃなくてだな…」
遊ばれているんではないだろうか、完全に
「ナマエからもなんとか言ってや……ってなんだその顔は!」
「 え? 俺どんな顔してた?」
「デレーっとして…!なんじゃくだぞ!」
「はいはい、あんまガオガオ怒るな」
「そんな風に怒ってなんかないっ」
そう言うところがからかわれる対象なんだぞ、って、教えてあげるべきか?