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天気もよく波も穏やかな新世界の海 晴れ晴れとした青空が広がり、船を襲う嵐も雨雲の姿もない今は、絶好の船の点検日和だ。
子ども一人分くらいの重さの工具箱を担いだ作業着姿のナマエは、モビー・ディック号の広い甲板を行き来していた。左舷のチェックが終われば次は右舷へ。それも終われば今度は船首を。側面が少し傷んで来ていたのも忘れずに。あっちへこっちへ動き回るナマエの顔には汗一つ滲んでいない。
仕事熱心で感心なナマエに、暇を持て余していたラクヨウがニコヤカに話しかけた



「よっナマエ おれ暇だからよ、何か手伝わしてくんねぇか?」
「……」
「そうこなくっちゃな」



無言で頷いて手招きしたナマエの許にラクヨウは駆け寄る。ナマエの方も猫の手も借りたいほど忙しかったので有り難い申し出だった。顔に髪がかからないように、ヘアバンドでドレッドヘアーをまとめているラクヨウを見ながら、ナマエはスペアの一回り小さな工具箱を手渡した。



「おれは何すりゃいい?」



やる気を見せてくれているラクヨウに手近なところへの指示を出し、自身も元の作業に取り掛かった。メインマストが撓んで来ていると報告があり、見てみると確かに二番紐が切れている。代わりの紐を用意しなくてはいけないだろう。「ナマエー、ココちっちぇー穴あいてっけどー」ラクヨウの声がする。「……今行く」必要な長さを計測しておき、近くを歩いていたクルーに指示をしてからラクヨウの許へ行く。その背後から同じく船大工仲間のナマエを呼ぶ声が聞こえた。作業場で仕事をしていた者もナマエを呼んでいる。今日も忙しい一日になりそうだった。その証拠に、今朝からずっと、マルコの姿を見れていない











「うげぇーアッチィのによくんな涼しい顔でやれっなナマエー」
「………」


何とか本船全ての確認が終わり、太陽も丁度真上に昇って昼頃になっていた。手伝いを申し出ただけあって作業中は文句を言わなかったラクヨウも、作業が終わった途端にダウンしたようだ。ナマエもほんの少し顔に汗を掻いていて、太陽が容赦なく二人を照らしていたのが分かる。



「………」



ふぅ、と溜まっていた息を吐き出して、ナマエは何ともなしに空を見上げた。
「……?」
真っ青な空に、一つ影が見えた。手で光を遮りながら注視してみれば、それは朝早くから偵察に出かけていたマルコのようだった。
「なんだぁ?」ナマエに釣られて、ラクヨウも影に気付いたらしい。



「おっマルコじゃん」
「…………ああ」



青い空に溶け込んで行ってしまいそうな真っ青な鳥の姿は、見間違えようがないだろう。
遥か上空を飛び、豆粒のようだった影が、今は少し大きくなって見える。偵察を終え、そろそろ戻って来ようとしているのかもしれない。

じっと、マルコの姿から目を放せないナマエに、
隣でへばっていたラクヨウがポツリと独り言のように洩らした



「……おれさぁ、オヤジとか、ジョズとか、エースとか、色んな能力者の力見てきたけどよ、 マルコのが一番いいよなぁって、思うんだよなー」



なんつーの?ロマン?人間誰しも一度は夢見る空飛ぶ能力とかさ、傷がすぐに治っちまうー!とかさ、憧れっよなーやっぱり。おれは悪魔の実ぃ食べてないから余計によ

「ナマエは? どう思う?」



ギラギラと熱い太陽から、丁度影になる位置を飛んでいるマルコ
青い粒子を後に残しながら空を飛ぶその姿が、だんだん眼で捉えられる距離にまで降りて来ている


眼からパッと手を下ろしたナマエは、やはり上空のマルコから目を放さないまま、




「 ……あぁ とても、綺麗だ 」




おいおい返事になってねーぞ!

笑って茶化してやろうと顔を上げたラクヨウは、あの ナマエがほんの少し口を緩めているのを見てしまって二の句が継げなかった。
そんなラクヨウの事なんか知る由もないナマエは、手に持っていた工具箱を甲板に下ろしてそっと腕を上に広げた。
何をする気だ?と疑問に思ったラクヨウは直ぐに合点が行く。

大きなモビー・ディックの甲板にいる小さなナマエの腕の中を目指し、空から 青が真っ直ぐに降りて来ていたから