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お前は不真面目だと怒られたことがある。
当時、部隊長を勤められていた先輩兵士の言葉だ。ナマエは真面目で実直だが、時に誰よりも不真面目になる、と。
その時はどう言った意味で言われた言葉なのか分からなくて、
自分自身、誠心誠意を持ってアラバスタ王国に仕えていると自負していただけに理不尽な先輩の言葉に苛立ちを隠せなかった。
しかし、年月が流れ多少なりとも精神が成長した時分、あの時の先輩兵士の言っていた意味が、明確に理解出来るようになった。



あぁそうだ、確かに俺は 誰よりも不真面目だ






「ナマエ 今上がりか?」
「はい」
「そうか… なら、その………、」
「ペルさん、宿舎までお供してもよろしいですか?」
「! あ、あぁ勿論」
「良かった」




最初からそのつもりで駐屯所前で待っていた筈のペルは、朗らかに笑った。


チャカとの二人行動が多いペルがこうして一人でいる事と、普段からあまり表情を崩さないペルがナマエの前では緩く笑うことは、アラバスタ兵舎の間でもとっくに揶揄かわれなくなったことだ。
周りに他の者達の姿はないのを良い事に、空いているペルの手に自分の手を重ねても、からかいの対象にはならない




「今日は、何をしたんだ?」
「射撃兵達との合同訓練で遠距離攻撃に対する戦法をご教授頂いていました」
「懐かしいな…。おれも受けたよその訓練 どうしても弾の弾道を読みきれなくて、最後まで教官に怒鳴られていたな」
「へぇ、ペルさんがですか?そうは見えませんが…」
「何度も練習したからな。ナマエだってじきに体が覚えるようになる」
「はい!」




力一杯返事をして、元気で従順な奴だとペルは思った。
ナマエがアラバスタ兵士になったのは二年前のことだったが、ナマエとペルが出会ったのは今より十数年前に遡る。
あの頃のナマエは、ビビやコーザと共に元気に砂原を駆け回る明るい子どもだった。それが年を重ね、落ち着きを持ち、大人の男になり、人はこうも変わるのかとペルが舌を巻く程の成長っぷりを見せた。




「…ナマエが王国兵士になると言った時はどうなるかと思ったが、上手くやれてるようで安心するよ」
「そうですね…志願理由で貴方の名前を出した時、隊長に『不謹慎だ!』と怒鳴られました。俺の中では揺るがない理由だったのですが」
「………それはそうだろう。何故兵士を志願する者の入隊理由が『護衛隊長ペル殿を護りたいから』なんて言うものか」



"不真面目だと思われても仕方ないぞ?"


遠い昔の先輩兵士の言葉と、今のペルの言葉が重なる。
不真面目?そうだろうか。ナマエはずっとペルが好きだった。スナスナ団へ"戦いの手ほどきだ"と銘打ってチャカ共々顔を出しに来てくれていたあの頃から、ずっと憧れていたのだから、そう言われてもピンと来ない。ビビだって、「え?理由なんて何でもいいのよ」と言ってくれたから後押しを受けたつもりで答えたと言うのに




「俺、本当に不真面目だと思いますか?」
「…いや、おれの口からは別に…」
「好きな人の傍にいたいからって理由は、いけませんか」
「いっ、いやだから、おれは…!」
「嬉しくありませんか、ペルさん」
「…っ」




―― うれしい、よ

ペルからの思わぬ返事に、ナマエもボッと顔を赤らめた。顔に熱が篭るのは、久しぶりの感覚だった




ああ、やはり俺は不真面目だ 宿舎の前まで来たと言うのに、ペルの手を放したくなくてたまらない。 それに 今から俺の口は、より不真面目なことを言い出そうとしている。帰したくありません、と言えば ペルは頷いてくれるだろうか