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「二人を留守番させて本当に大丈夫だったかな………やはり足止めを見越して一日分くらい料理の作り置きをしておけば…ペローナにキッチンを使わせるととんでもない目に遭ったし………」


「ナマエ、洗剤を見つけてきた」
「ちゃんと業務用のを持ってきたか?」
「……ああ ちゃんと業務用だ」
「おぉしよくやったミホーク! よし急げ、とにかく早く目当ての物を買って直ぐに城へ帰るぞ!二人が…と言うか城が心配だ!買い物リスト用意!!」
「…持っている」
「なら次はバザールの方だ!」





メモ用紙にして10枚、一月に二回行われる大量買い物の日
暗記をするのも難しい一覧表を付き添わされたミホークに持たせたまま、ナマエはバザールの何処へと走って行ってしまったのか。大きな身体をしたナマエでも、人ごみに紛れてしまえば探し出すのも億劫である。しかしミホークは溜息を吐きながらもナマエが消えて行った方角へと歩き出した。彼を追いかけなければ、つまらない一日となってしまうだろう








「この肉を4人分買おう。だから二割マケてくれねぇか」
「お客さん…おっきい体して言ってることはそこいらの主婦と一緒だね…」
「分かったもう1kg余分に買う。三割引いてくれ」




屋台の低い軒先に頭をぶつけそうになりながら、腰を屈めて肉屋の店主と交渉するナマエの姿をすぐに見つけることができた。(…またやっているな)ミホークは呆れがちだ。金ならあるし、無くなればまたミホークが稼いで来る。なのに、生まれつきの性格なのかナマエは"ああ"だった。恥ずかしいとは思わないが、よくやるなと思う。ナマエのそう言うところに存分に世話になっている身としては、強く出れないだけなのだが



「……ナマエ 勝手に突っ走らないでくれ」
「おおミホーク聞け!気前の良い店主が四割もマケてくれたぞ。今夜は思い切ってビーフシチューにするかなァ!」



ナマエは破顔し買い取った肉の塊をヒョイっと担いでもう次へ行こうとした。買い物好きと言うか、いつも身体を動かしていたがるところがナマエの性格の土台となっている気がする。行きつけの島の常連のナマエに、道行く者達の何人かは「こんにちはナマエさん」「今日も店に寄ってっておくれよ」とにこやかに声をかける。それは店の店主であったり、酒場で働くバーテンダーであったり、顔馴染みの主婦であったりと十人十色で「そうだな、後で行く!」とそれぞれに返事をする顔も楽しそうだ




「………おれもいるんだが」
「? 分かってるぞ?」
「……………いま一つ、ナマエの思考から追い出されている気がする」



それが面白くない


そう言いたげな、子どもっぽいミホークの相変わらずの無表情にプラスされた"むくれ"を感じ取ったナマエは、「しょうがない奴」と先に述べておいてから 不機嫌なその顔を真正面から見つめた



「 なんだ。寂しくなったのか?」
「…………」
「お前が一緒に行きたいと言うから久しぶりに二人で来たんだろ? 俺がお前の存在を忘れるもんか。買い物で使ってるこのお金は、ミホークが稼いで来てくれたものだしな」



七武海のジュラキュール・ミホークが 一般の島で買い物をしてるとあまり騒ぎになりたくないから大人しくしとけよとは言ったけど、それは何もお前をつまらない気持ちにさせる為に言ったんじゃないからな?


語りかける言葉は優しく柔らかく しかし子ども扱いするような言葉遣いではなく、あくまでも大人相手に言い聞かせるように述べられる




「分かったな?」
「……。」
「よし、なら次は魚介類を見に行くぞ。ミホークの好きなホタテ貝の白ワイン仕立てでも作ろうか」
「……今日は、ビーフシチューだと言っただろう」
「お前、俺の料理の腕を舐めるなよ。メインディッシュを何種類作ろうが変わらんさ」
「…なら、ワインも見に行きたい」
「そうか?じゃあ料理用に何本か見繕って…」
「………………」
「……分かった。三本までならミホーク用に買うのを許そうじゃねぇか」
「!」




結局、この場合甘いのはどっちだろう。しかしそこは大した問題ではない
大切な者を大切にしたい、好きな者は甘やかしたい
そう思うのに、誰も彼もは関係ない筈だ





「しかしナマエ 城にいる二人が心配だから早めに帰るのではなかったのか?」
「……あ すっかり忘れてたな…」