20万企画小説 | ナノ
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悪夢のきっかけは神様の良心が原因だった。




この子は前の生でとても大変な苦労をし、人が一生に負うべき負担の十倍の負荷を抱えながら生き、最期にほんのちょっと救われて、20と言う若い命を散らせたのだ

至極気まぐれに出来ている神は、これを不憫と捉える。
可哀想に、可哀想に。あんな苦労をして、あんな哀しい思いをして、可哀想に。人間の子は、生まれて三ヶ月までは前世の記憶を持って生まれてくる。たまに三ヶ月以上覚えて育つ人間もいるようだが、彼には最初から記憶と言うものを与えてやらなければいい。思い出して得するでもなし。覚えておかなくてもイイことだ、と神は彼の許可なくそれを実行した。"良かれと思って" そんな名前のお節介が、記憶を失くされた子どもの大切な人を随分傷つけていたことを 神は、気付くのが遅れに遅れた。




『……ごめんね 奪っていたものは、全部返すよ』




大きな塊 20年と短い記憶 だが一人の人の一生分の記憶だ それを全部返してあげる


愛しすぎてごめんね、と神様は笑い ――エースから意識を逸らせた












がくん

上から押し付けられたみたいな感覚がして、頭が重たい




「…エースー?急にボーっとしてどーしたんだよ」
「………ルフィ?」
「? そうだぞ?」
「ルフィだよな?」
「ルフィだぞ!」



――ルフィだ! いや、分かってたけど!

ルフィはおれの弟で、今も、昔も そうなのに、何でそれを忘れてたんだ?脳の記憶中枢が急激に活性化を始めたみたいに動き出す。色んな景色やシーンが脳にフラッシュバックして、ロールのように巻き上げられて、眩暈がしそうだ。

でも、 今ならあの時の違和感も、疑問の意味も分かる 懐かしい白ひげの面々 オヤジの顔、 「覚えてねェなら仕方ねェよなァグララララ」 豪快に笑ってたっけそう言えば 覚えてなかったおれにちょっと落胆した風に何回も怒られて、その度におれは不機嫌になって、何意味ワカンネェこと言ってんだこの軍団 とか思ったっけ  …そうだ、ナマエ おれ、アイツに、いっぱいひでェこと言った



「なあルフィ! ナマエ、今どこにいるか分かるか!?」
「え、ナマエ?」



ルフィがそんな事知ってるとも思えなかったけど、今エースの一番近くにいる記憶持ちはルフィしかいない。謝らないと、ごめんって、いっぱい伝えねぇと! 気持ちが逸ってしまうエースに肩を掴まれながら、ルフィはポカンとした顔のまんま「ナマエなら、そこの電柱んとこからおれ達見てるぞ?」「は?」指を指された先には、本当にナマエがいた。
 …電柱の陰から、見てたのか。 この前、あんなに酷いこと言ったのに。嫌われてもおかしくない事ばっか言ったのに、




「………バッカじゃねぇの」




思わず笑顔で言ってしまった でもそのエースの言葉だけが微かに聞こえて来たナマエは、勘違いしたらしい 「!」バカって言われた、みたいな顔をして蜘蛛の子のように逃げていく。「!?あ、お、おいナマエ!待て!違うから今の!」慌てて追いかけた。すぐに追いついて、伝えないといけない。全てを思い出したと。ごめんなさい!って言って、ずっと忘れててごめん、ほらおれってバカだからさ、って言うのは…止めた方がいいかな、不真面目っぽい お前はおれのことを覚えててくれてありがとう、って ずっと好きでいてくれてありがとうって   おれは




「ナマエーーーーー!!!すまーーーん!!!」


大声と一緒に、無意識のうちに涙が両の目に滲んで来た。それはエースの頬を伝って、ボタボタと大粒の水滴となって地面に落ちて行く
どうしておれが泣くんだ 本当に泣きたいのは、ナマエだろおれのバカ野郎













「な、なんでエースが謝ってるんだ…!?俺の方だろ?あんっだけ言われたのに懲りずにストーカーしてる俺のが100倍謝るべきじゃね…!?」



…ああ!?でも何だか今、エースが泣いてるような空気がしたぞ!